学生アパートの悲劇忘れず、安全な物件選びを 阪神大震災25年の自戒

西日本新聞 くらし面

 新局面 災害の時代―後悔しない備え❺

 新年おめでとうございます。まだ、お正月気分が抜けない方もおられるでしょう。あの日もそうでした。

 1995年1月17日。午前5時46分、阪神淡路大震災が発生し、6400人超が犠牲となりました。倒壊した古い木造アパートの1階で命を落とした人々の中に、同級生がいたのです。

 実は私も学生時代にこの震災を経験した一人です。あの前夜、部活の新年会が阪急西宮北口駅そばの店で開かれました。翌朝、その会場近くで新幹線の高架が阪急線上に落橋し、3カ月にわたり両線とも不通になりました。なぜか気乗りせず参加しなかった私は、間一髪で難を逃れました。

 2016年に熊本地震が起き、東海大阿蘇キャンパス近くの学生アパートで3人が犠牲になりました。震災で同級生を多く失った災害研究者として、大学人として痛恨の極みでした。耐震基準の規制は古い建物には適用されていないのに、講義の中で、より安全なアパートの選び方に細かく言及していなかったのです。

 戦後、焼け野原を区画整理せず、さみだれ式に再建された木造住宅の密集地域が各地に残っています。阪神大震災はそんな地域の安価な学生下宿を容赦なく襲いました。さらに停電復旧後の通電火災で、家屋の下敷きになったまま猛火に巻かれた人も多数いました。

 学生に善かれと安い下宿を提供されていた大家さんたちは、二度と繰り返したくないと下宿をやめるケースが見られました。

 今、私は学生に、阪神大震災を教訓に建築基準法が改正された2000年以降の物件を目安に、洪水も考慮し、2階以上の部屋を選ぶよう勧めています。

 ある大学が熊本地震を機に学生への古い物件の紹介をやめたところ、大家に「訴える」と言われていると相談されたことがあります。「神戸や熊本の悲劇を伝え、学生の命には代えられぬ理由を説明してください。納得されない場合は、震災を経験した神戸大卒の最高の災害弁護士を紹介します」と助言しました。

 毎年この時季、「災害食」を皆でシェアするランチの会を学生と催しています。阪神の経験を風化させないという犠牲者への誓いでもあります。今年も以下の要領で開きます。アパート選びのこつも伝授します。ご関心のある方はぜひお越しください。(九州大助教 杉本めぐみ)

 ◆杉本助教の防災イベント 22日、福岡市西区桑原の九大伊都キャンパス・ドミトリー(学生寄宿舎)Ⅲ▼第1部=正午からランチ会。非常時お薦めのおかず1品(3、4人分)用意を。白ごはん1食分と箸と飲み物も各自持参▼第2部=午後2時50分から講義。テーマは「阪神大震災25年にこれから備えておくべきこと」(参加無料、片方だけ参加可)。問い合わせは九大決断科学センター=092(802)6046

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ