16歳でホームレスに…正社員になり持てた夢「絶対に諦めない」

西日本新聞 社会面

【連載】子どもに明日を 貧困その後(3)

 「頑張って正社員になりたい」。4年前、こう語っていた福岡県内に住む優(23)=仮名=は、当時勤めていた県内の空調設備会社を辞めていた。

 会社に入ったのは17歳のとき。少年の立ち直り支援団体からの紹介で、派遣社員として働き始めた。

 真面目な仕事ぶりが評価され、契約社員に“昇格”。上司からは正社員になれるチャンスがあると言われていた。ところが2017年4月、会社から突然「派遣社員に戻ってほしい」と通告された。張り詰めてきた心の糸が、切れた。「もう無理」。翌年退職した。

 目標を見失い、自暴自棄になった。暴走族時代の仲間たちと連日のようにカラオケやボウリングをして遊び明かした。

 2カ月後、転機が訪れる。正社員の枠がある県内の土木工事会社を探しだし、一緒に働こうと誘ってくれた仲間がいた。

 「今すぐ働きたい」。3カ月の試用期間を経て、18年10月に念願の正社員として採用された。

   ◇   ◇

 父子家庭に育ち、幼少期は食うや食わずの毎日だった。中学生で里親に預けられ、卒業後は再婚した母親の元へ。だが継父になじめず、1カ月で家出した。16歳のときには公園でホームレス生活を続けたこともあった。

 今は、就職した会社でガス管の敷設工事を担当している。月給は手取りで約25万円。前職より5万円ほど増えた。何より仕事にやりがいを感じている。「会社のイメージが悪くなってはいけないから」と、茶髪も黒く染め直した。

 現場監督になるために必要な2級土木施工管理技士の資格取得を目指し、毎日1~3時間は机に向かう。「こんなに勉強に打ち込んだのは初めて」。昨年、学科試験に合格し、今秋には最終の実地試験を控える。

 「たまにはご飯を食べにおいで」。中学時代にお世話になった里親の60代女性は、そんな優を支えてくれる一人だ。実の母親と疎遠の優にとって「母親以上の存在」。毎年母の日には花と果物を贈る。里親女性と交流を続けることで「幸せな家庭を築いて、マイホームを建てたい」という夢を持てるようにもなった。

 実父は亡くなり、腹違いの兄とアパートで2人暮らし。交際中の彼女との結婚も考えているが「まずは生活が安定してから」と決めている。

 20年4月 専任主任、21年3月 2級試験合格、24年10月 1級試験…。「成り上がりファイル」と表紙に書かれたバインダーには今後の目標が並ぶ。

 「資格を取ってもっと上を目指したい。何回失敗しても絶対に諦めない」

 上司からのアドバイス、どうすれば仕事の能率が上がるか考えたこと。書きためてきた一枚一枚のメモを見返しながら、固く心に誓った。

(登場人物はいずれも仮名)

非正規雇用の現状 総務省によると、パートや派遣社員などの非正規労働者は2019年11月現在で2186万人に上り、15年と比べ169万人増加した。労働者全体の約4割を占め、正規労働者との所得格差は約3倍。厚生労働省が18年に15~34歳の約2万人を対象に実施した調査では、非正規労働者の41.8%が正規雇用を希望していた。

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