総理大臣まで務めた人がなぜ、こんな発言を…

西日本新聞 オピニオン面

 総理大臣まで務めた人がなぜ、こんな発言を…という驚きがほとんどないのも残念だが、麻生太郎副総理がまた物議を醸す言葉を発した

▼「2千年の長きにわたって、一つの民族、一つの王朝が続いている国はここしかない」。福岡県直方市の国政報告会での発言。無論、日本は単一民族国家ではない。昨年4月にアイヌを「先住民族」と明記した「アイヌ民族支援法」が成立した

▼北海道や樺太(サハリン)で独自の文化を形成してきたアイヌ民族の生活を変えたのは明治維新だった。明治政府が進めた開拓で住み慣れた故郷を追われ、狩猟や漁業などの生業を奪われた

▼そうした歴史的事実を麻生副総理が失念していたというのなら、お薦めしたい小説がある。直木賞を受賞した川越宗一さんの作品「熱源」である

▼樺太や北海道を舞台に同化政策という名の迫害に耐えながら南極探検隊にも参画したアイヌらの生きざまを描く物語。「私たちは滅びゆく民と言われることがあります。けれど、決して滅びません」。主人公の言葉が胸を打つ

▼小説の最終章は1945年夏。日本の降伏後も樺太侵攻を続けたソ連軍の戦車にアイヌの女性が立ちはだかる。思えば太平洋戦争の国内最大の激戦地は琉球王朝があった沖縄だった。こうした少数派の人々の犠牲があり日本と世界の繁栄があることを政治家も私たちも忘れまい。「多様性」を認めることから始めたい。

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