日米安保60年 同盟「深化」より「進化」を

西日本新聞 オピニオン面

 太平洋戦争、朝鮮戦争と相次ぐ戦争で混乱、疲弊した東アジアに、米国が主導する新たな秩序と安定を築く-。それが日米安全保障条約の要諦である。

 敗戦国日本が独立を果たした1952年に発効した旧条約で、日本は米国の同盟国となり、米軍の駐留を認めた。その改定を巡り、国論は二分され、激しい反対闘争が起きた。当時の岸信介首相の退陣と引き換える形となった現行の安保条約の署名から、あすで60年となる。

 60年前の改定で、米国は日本を守り、日本は基地を提供して米軍を支える協力関係が確立された。軍事同盟としては異質だが、双方にメリットがある条約なのは間違いない。その後の日本は「軽武装・経済重視」の進路をとり、日米安保体制は経済大国へ成長する礎になった。

 東西冷戦の終結に伴い、世界の安全保障の地図は大きく塗り替えられた。主に旧ソ連に対抗する軍事同盟だった日米安保も、現在は軍事大国化が顕著な中国への対処が重要課題の一つになっている。

 日本が安全保障の多くを米国に依存し、経済に国力を傾注できたことは事実だ。両国民の間でも定着し、米国が結ぶ二国間同盟の中で「最強」と評価されるほど深い関係を築いている。だが、そのひずみも直視しなければならない。国際情勢は様変わりし、日米を取り巻く安全保障環境も変質しているからだ。

■「米中対立」にどう対応

 最大の変化は、米国が「世界の警察官をやめる」との立場を鮮明にしていることだ。現実に在外駐留米軍を縮小しようとしており、この流れは「米国第一」を掲げるトランプ大統領が交代しても変わらないだろう。

 内向き志向が強まる米国が日本に対し、軍事貢献の肩代わりをさらに求めることが予想できる。慎重な対応が肝要だ。

 安保体制下で自衛隊は活動領域を拡大している。国連平和維持活動(PKO)だけでなく、今や集団的自衛権の限定行使も担える存在だ。米国の世界戦略に応じ、海外派遣がなし崩しに行われる懸念が強まっている。米国とイランの対立を背景とした今回の中東への海上自衛隊派遣は、その最たる例である。

 政府は「日米同盟の深化」を強調する。自衛隊が米軍と世界各地に出る危うい深化より、互いに主張すべきを主張する関係へ「進化」を目指してほしい。

 一方、軍事と経済、技術も一体となった米中の覇権争いは今後さらに激化するだろう。その中で日米安保をいかに位置付けるか。最大の難問と言える。

 米中の軍事的正面衝突で日本が無関係とは考えられない。絶対に避けるべき事態である。

 そのために日米安保を土台としつつも、米国を中国とも共存できる世界秩序の構築に導き、経済力にものをいわせた中国の強権的な振る舞いもいさめる。そうした外交を日本が欧州などと実現できるかが問われよう。

■基地負担軽減を求めよ

 国内のひずみにも目を向けたい。何といっても沖縄の米軍基地の過重負担だ。現在、全国の7割が集中する。戦後、米軍基地に対する反発は全国で根強く、整理・縮小が進んだが、沖縄では温存され、むしろ72年の本土復帰後、集中度が上昇している。政府は米側に基地負担軽減を正面から提案するべきだ。

 在日米軍関連の事件事故が起こるたびに物議を醸す日米地位協定の問題もある。日本の捜査や司法手続きが制約され、地元の不満や不信は強まる一方だ。政府は改定に及び腰だが、国民の理解こそ日米安保体制の土台である。検討を求めたい。

 日本の安全保障を考える上で忘れてならないのは平和憲法の存在だ。日本は戦争で利益を得ることのない国を目指してきたはずだ。それにより得られた国際的な信頼こそ何ものにも代えがたい大切な財産である。

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