障害者招きモニターツアー 長崎県、ユニバーサルツーリズム定着狙う

西日本新聞 長崎・佐世保版 岡部 由佳里

 障害などの有無にかかわらず、誰もが観光を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」を広め、観光地としての魅力アップや来訪者の増加につなげようという動きが長崎県内でも本格化している。福祉事業者などが介護サービス付きの旅行商品を売り出したほか、県も障害者を招いたモニターツアーを実施。県内の観光地を訪れたいという障害者や高齢者などの問い合わせを受け付け、対応が可能な観光施設や宿泊施設につなぐ「ワンストップ相談窓口」などの設置も検討している。

 昨年12月下旬、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産の一つ、南島原市の原城跡(国史跡)に、車椅子の男性2人の姿があった。城跡一帯の順路は舗装されておらず、土がむき出しだったり、砂利道だったりと足場は悪い。

 「これくらいなら、押してもらえれば上れますよ」と東京の社会企業家、上原大祐さん(38)。2010年バンクーバー冬季パラリンピックのアイススレッジホッケー銀メダリストだ。

 県が上原さんと東京の旅行会社社員平野遊大さん(27)を招いて実施したユニバーサルツーリズムのモニターツアー。この日、2人は同行したスタッフのサポートを受けながら、海を見下ろす高台まで移動。キリシタン弾圧の歴史に思いをはせた。

 原城跡での移動では車椅子を引く補助具も使われた。平野さんは「段差に板を置いてスロープ代わりにするなど、少しの工夫でクリアできることもある。お金をかけて設備を整えるよりも、ちょっとした心遣いが大事」と強調する。

 2泊3日のツアーでは雲仙温泉や船上からのイルカウオッチングなども体験。県は2人の意見を事業者に伝え、今後の旅行企画の参考にしてほしい考えだ。

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 ユニバーサルツーリズムを巡っては、シニア世代での観光需要の増加などから全国的に関心が高まっている。神戸市ではNPO法人が運営するツーリズムセンターで、障害者や高齢者に対応した旅行商品を販売。佐賀県の嬉野温泉では、旅行に訪れた高齢者や障害者の入浴などを介助する取り組みが進む。福岡空港には昨年11月、バリアフリー情報などを提供する観光案内所が設置された。

 県内では「ながさき福祉事業協同組合」(長崎市)が、介護が必要な障害者や高齢者に県内の旅を提供している。看護師や介護士がサポートして2018年に本格的に開始、これまでに約30件の利用があった。

 課題も浮かんでいる。組合には旅行業者も加わっているが、介護や医療、福祉などに携わる事業者が多く、きめ細やかな案内や営業面などは十分とは言えない。同協同組合の里見浩則代表理事(59)は「幅広い旅行業者や宿泊業者などとの連携を深めていくことが必要だ」と話す。

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 県は障害者や高齢者など観光客の問い合わせを受け付け、対応可能な事業者につなぐワンストップ相談窓口の設置を検討している。広域での対応は難しい事業者の橋渡し役を県が担い、県内全域での観光の後押しを目指す。

 県観光振興課によると、窓口は県庁内に設けることを想定。観光を希望する利用者から問い合わせを受け、行き先や必要なサポートなどの希望を聞き、対応可能なホテルや飲食店、交通事業者などを紹介する。

 このほか長崎空港内に観光施設や交通機関のバリアフリー対応の有無を紹介する「ユニバーサル観光窓口」の設置も想定。いずれも2020年度に始めたい考えで、同課は新年度一般会計予算の概算要求に約1500万円の事業費を盛り込んだ。

 県内の観光客数は訪日外国人客が増加する一方で、日本人客は人口減少に伴い減ることが見込まれる。このため人口の3分の1を占めるとされる、障害者や高齢者、妊婦、ベビーカー利用者などの観光に役立つ情報を提供することで、活路を見いだしたい考えだ。

 同課は「長崎は坂の街で不便なイメージがあるが、窓口の設置でどんな人にも優しい街として旅先に選ばれることを目指したい」と話している。(岡部由佳里)

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