筑豊のレトルトカレー、こだわりが隠し味 害獣活用や高校生開発…

西日本新聞 筑豊版 田中 早紀

 仕事の合間、福岡県筑豊地区の道の駅などに立ち寄ると、地域性を前面に押し出したオリジナルのレトルトカレーをよく目にする。「三度の飯がカレーでもいい」。自称「カレーマニア」の記者がスプーンを片手に、隠し味のスパイスを探った。

 害獣被害に苦しむ添田町が昨夏、販売を始めた「天狗(てんぐ)鹿カレー」。英彦山ゆかりの「豊前坊天狗」にちなんで命名された。ジビエ料理のシェフが手作りし、分量200グラムのうち、町内でしとめた鹿肉が40~50グラムを占める町自慢の一品だ。

 町内の害獣による農業被害額は、2018年度には約780万円にものぼる。これまでも、鹿やイノシシを町の食肉処理加工施設で処理し、肉まんなどの特産品に変身させてきた。

 「需要の少ないムネ肉、ばら肉も商品化できないだろうか」。ジビエ肉処理を担当する町地域おこし協力隊員の悩みが、開発の出発点だった。鹿肉ではロースやモモ肉に比べ、焼くだけの料理には適さないカタ、スネ、ネック肉は人気がない。だが長時間煮込むと柔らかくほぐれるような食感が魅力的だ。これらの肉を有効活用し、かつ常時販売できる新たな商品を作ろうと試食会を実施。ほかの試作品より客の反応が良かったカレーに決まった。

 施設と取引のある福岡市内のジビエ料理店に協力を得た。協力隊員の松尾銀河さん(26)らは「肉が柔らかいのはいいが、ブヨッとした食感をなくして」など、納得のいくまで率直に意見を伝え、試作品の味見を繰り返した。

 食べてみると、鹿肉独特のクセを、深みのあるトマトベースのルーが包み込んでいる。スパイシーな香りも楽しめた。

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 小麦粉とスパイスを炒める。タマネギもあめ色になるまでじっくり炒め、焼いた牛肉を水で煮込む。煮汁も味の調整に使う。全行程は2日間-。最初は甘みを感じるが、後からスパイスが効いてくる。柔らかい牛肉の食感が絶妙。

 直方市の大和青藍高調理科は、手間暇かけたカレーを行事でふるまい、好評を博していた。2012年5月に同科の調理部の生徒が定期的に運営するレストラン「たくみのたまご」がオープンした。これを機に人気の味をいつでも再現できるようにと開発が始まり、飯塚市の食品製造会社にレシピを提供。生徒が10回近く味を確かめ、同年秋に完成した。その名は「藍(あい)カレー」。これまでに1万箱以上売れた。

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 「田中による田中のための田中カレー(たなかれー)」。私の名前も田中だけに気になる品。生みの親は、飯塚市長尾で食料品店を営む田中仁さん(45)。

 地元ブランド牛の知名度向上など、食を通したにぎわいづくりに携わっていた田中さんが、長年温めていた「田中カレー」の計画を実行に移したのは2017年。由来は単純にゴロが良いから。「全国の田中さん全員に食べてほしい」と不敵な笑みを浮かべる。

 だが、そこは地域おこしに注力する田中さん。カレーに地元産食材を盛り込むことにした。現在、嘉麻市の辻養蜂場のハチミツを使った「バーモント」と、桂川町の農家がつくるアスパラガスを入れた「ベジタブル」の2種類を販売している。

 ベジタブルを食べると、「スパイシー辛口」をうたうだけあり、舌にピリッとくる。アスパラガスの風味が強いが、不思議としつこくない。

 「近くで生産する農産物を使ってほしいという声があれば、ぜひ相談して」と田中さん。カレーを通した地域の魅力発信を続ける。

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 それぞれのカレーには、関係者のこだわりと情熱が味ににじんでいた。こればかりは食べてみないと分からない。小腹がすいたら、お近くの道の駅へ足を運んでみては? (田中早紀)

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