情報提供者と刑事のやりとり。<「九時三十五分の西鉄香椎駅着です」…

西日本新聞 オピニオン面

 情報提供者と刑事のやりとり。<「九時三十五分の西鉄香椎駅着です」(略)「それは電車ですか?」「はあ、競輪場前を九時二十七分に出る電車です」>

▼松本清張の推理小説「点と線」。文庫本をポケットに、福岡市営地下鉄箱崎線と西鉄貝塚線をつなぐ貝塚駅に行く。昭和半ばにはそこに「競輪場前」があった。福岡競輪場があった所は貝塚公園になった

▼貝塚公園は交通公園。懐かしい乗り物も展示されている。東京-博多の寝台特急「あさかぜ」などに使われた寝台車を見ることもできる。「点と線」にはあさかぜが重要な役回りで出てくる

▼貝塚駅から貝塚線のレトロな電車に乗ると、西鉄香椎までは小説と同じく8分で着く。歩いて数分のJR香椎駅周辺を含め、清張が作中で写し取ったうら寂しい風景は今はない。ベストセラー小説の舞台だったことを伝えようと地元の人たちが一昨年、募金活動をして記念碑を駅前に建てた

▼貝塚駅に戻り、もう一度公園へ。かつて近距離旅客機などに使われた古い飛行機も展示されている。「点と線」が世に出たころは特別な乗り物だった旅客機が、あさかぜと共に事件解明のかぎを握っていたことを改めて思い出す

▼公園の寝台車は傷みが目立つ。東京の人が取り組む修復保存活動に地元箱崎の小学生も参加、と昨秋の本紙で見た。福岡が主舞台の名作の記憶も、薄れていく輪郭を修復しながら保存したい。

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