老朽堤防点検へVRで熟練者育成 国交省九州事務所が研修設備

西日本新聞 一面 御厨 尚陽

 河川堤防の“高齢化時代”に備え、国土交通省九州技術事務所(福岡県久留米市)は新年度から、堤防の健全性を点検する人材の育成に乗り出す。亀裂などを再現した模擬堤防や、決壊のメカニズムを学ぶ仮想現実(VR)装置を使って研修する九州初の試み。国の調査では、設置から40年たった堤防設備は全体の6割に上る一方、点検の知識や経験を備えた人材は減少している。近年は集中豪雨の頻発で傷みやすくなっており、決壊の前兆を見抜くための観察眼を鍛える。

 土を固めた堤防は、川の増水や降雨などさまざまな要因でもろくなる。さらに堤防の下を通り抜ける「樋門(ひもん)」と呼ばれるコンクリート水路の多くは高度経済成長期に造られており、老朽化すれば決壊しやすくなる。このため、国や自治体の職員が梅雨などの出水期前後に点検し、必要に応じて修繕している。

 国交省によると、設置後40年を超えた樋門は2019年3月現在、国の直轄河川だけで4837施設(全体の57%)に上り、39年には7360施設(同87%)になる。

 一方、市町村の土木職員は17年度現在9万518人で、12年前に比べて14%減少。国交省の職員も現場での経験不足が深刻化しているという。

 九州技術事務所の敷地に設置された模擬堤防は長さ50メートル、高さ3メートル、幅4メートル。河川の流れが激しい場所に造られて40~50年経過した状態を想定し、堤防や樋門の亀裂▽のり面の陥没▽地下から水が噴出した跡▽変形したコンクリート護岸-など決壊の前兆となる16の現象を34カ所に再現した。

 研修ではコンクリート護岸をハンマーでたたいて空洞がないか確かめたり、亀裂の長さを測ったりしながら点検のノウハウを学ぶ。

 VR装置はCGで堤防を再現。川の水の勢いで護岸が削られる現象や、水が染みて崩壊する様子を体感することで、学びながら危機意識を高める。

 17年度から約5千万円をかけて整備を進めており、いずれも本年度内に完成予定。九州地方整備局や自治体職員らの研修に利用し、市民の防災教育への活用も検討する。この取り組みは近畿技術事務所が17年、全国に先駆けて始めた。

 九州技術事務所の植西清技術情報管理官は「堤防の管理は治水対策の基本。近年は雨の降り方が激しくなっているだけに人材育成を急ぎたい」と話している。 (御厨尚陽)

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