音読できず、不登校になった 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

連載:吃音~きつおん~リアル(12)

 C君は高校1年の10月ごろから、国語と英語の授業中に「教科書を忘れた」と、指名されても音読をしないことが増えてきました。翌年1月には「体調が悪い」などいろいろな理由を挙げて欠席するようになりました。

 母親が学校に行きたくない理由を聞くと、「授業中に発表するのが怖い。音読で言葉が出なくなる」。母親によると、小学校時代は吃音(きつおん)があったけれど、成長するにつれて目立たなくなっていました。「吃音で悩んでいたなんて」とわが子の悩みに気付けなかったことを後悔していました。

 「吃音外来」を初めて受診したのは3月末。C君は「ずーっと困っていた」と言います。発音が難しい言葉は簡単な単語に言い換えていたそうですが、国語と英語は教科書の文章をそのまま読まないといけません。教諭やクラスメートに変だと思われるのが怖かった、と打ち明けてくれました。

 思春期以降、吃音がある子どもの悩みは他人のからかいやいじめより、スムーズに言葉が出ないことに対する劣等感や自己否定感などが大きくなります。症状を隠そうとして周囲とのかかわりを避ける傾向もあり、中高校生になって初めて吃音外来を訪れる患者の約3割は「不登校」が主な訴えです。

 C君は授業中の発表で吃音を知られる不安と恐怖が大きいようでした。このため、本人と一緒に学校に提出する診断書を作成。不安を代弁し、苦手な教科の担当教諭には授業中の発表機会を減らすなどの配慮をお願いしました。

 こまめに通院してもらい、不安が生じたらすぐに解決法を一緒に考え、何らかの行動に移すようにしました。こうして、症状そのものは改善しなくても、再び登校できるようになりました。現在は無事に高校を卒業し、言語聴覚士として働いています。

 吃音は2016年に施行された障害者差別解消法の対象であり、発表機会の免除といった「合理的配慮」を受けることができます。きちんと配慮を受けるためにも、吃音があると気軽に話せる社会になるよう期待しています。 (九州大病院医師)

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