懸案触れず、五輪に意欲 「逃げ切り」の思惑透ける首相施政方針演説

西日本新聞 総合面 湯之前 八州

 令和に改元されて初めて行われた20日の施政方針演説。安倍晋三首相は東京五輪・パラリンピック成功への意欲を繰り返し訴える半面、「復興五輪」の陰でいまだに4万人が避難するフクシマの現実に寄り添う言葉はなかった。「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の汚職事件」「桜を見る会」の説明もなし。五輪に期待する世論に乗じ、難題や不祥事の議論にはふたをして逃げ切りたい-。政権の成果を自画自賛する表現が並ぶ演説の裏に、そんな思惑が透けた。

 「堂々たる走りは、焼け野原からの復興を世界に力強く発信した」。首相は、前回1964年の東京五輪で聖火リレーの最終走者だった坂井義則氏が、国立競技場に走り込んでくる場面から語り始めた。原爆投下当日の広島に生まれ、平和五輪の象徴でもあった坂井氏。「彼を取り上げたことで、核廃絶のメッセージに代えた」(首相周辺)。「核の傘」を提供する米国に配慮し、核廃絶には直接的な言及を避けた。

 旧民主党から政権を奪還した7年前に日本を覆っていた、もう成長できないとの「諦めの壁」を完全に打ち破ったと主張。首相は「わが国はもはや、かつての日本ではありません」と声のトーンを一段上げ、令和の新時代を切り開いていこうと続けた。

 「2020年の聖火のスタート地点であるJビレッジは、子どもの笑顔であふれている」「産業が次々と生まれようとしている」…。フクシマの復興をアピールする言葉を連ねていくが、出口が見えない福島第1原発の処理水対策などには触れず。「国民が求めているのは、桜を見る会や政権のあら探しではない」(政権幹部)。そんな強気を背景に、IRは「高い独立性を持った管理委員会の下、厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組みます」の一文だけだった。

 ただ、「安倍1強」も盤石ではない。桜を見る会の首相推薦枠が問題視された昨年末、世論調査は内閣不支持が支持を逆転した。最新の共同通信の調査では、桜を見る会に関して首相が「十分説明していると思わない」が9割、汚職事件を受けてIR整備を「見直すべきだ」が7割に上っている。

 東京都知事選や五輪を直後に控え、会期延長が難しい今国会。首相の自民党総裁としての残り任期が1年8カ月となる中、「逃げ切り」のシナリオが崩れれば、退陣に追い込まれるとの観測もささやかれる。演説を聴いた複数の自民議員は、異口同音に感想を語った。「国民をなめてはいけない」 (湯之前八州)

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ