登場人物8人の施政方針演説 物語性演出でメッセージ伝える

西日本新聞 総合面 川口 安子

 安倍晋三首相は第2次政権以降、国会演説で、さまざまな人物に言及してストーリー性を演出する手法を好んで用いている。メッセージを国民に印象付けたい狙いがあるが、「情報の羅列にとどまり内容が伴っていない」との見方もある。

 今回の施政方針演説では、8人の名前が登場。そのうち、1964年の東京パラリンピック日本選手団団長の故中村裕医師(大分県別府市出身)など3人が五輪の関係者だった。「半世紀ぶりとなる今夏の東京五輪などをきっかけとして、新時代へのスタートを切る思いを込めた」。政府高官は首相の意図をこう代弁する。

 こうした演出は国会演説の作り方を、各省庁に政策ごとの短い文章を提出させてまとめる「短冊方式」から転換し、首相官邸がまず草稿を作って各省庁に点検させる「官邸主導型」にした事情による。第2次政権で草稿作成に携わる官邸関係者は「演説全体にストーリー性を持たせられるようになった。伝えたい政策の文脈に合わせて、取り上げる人物をピックアップしている」と明かす。

 第1次政権時の演説に登場するのは吉田松陰など歴史上の人物だけだったが、第2次政権では東日本大震災の被災地で出会った少女や介護福祉士を目指す学生など、一般の人が目立つのも特徴だ。今回も地方創生のくだりで、東京から島根に移住した男性のエピソードに触れている。早稲田大政治経済学術院のソジエ内田恵美教授(政治言説分析)は「エリートよりも一般の人を出す方が有権者の共感を得やすい。メディアの発達や無党派層の増加により、一般の人々に重きを置く演説は世界的に増えている」と分析する。

 一方、東照二・ユタ大教授(社会言語学)は選んだ人物について、首相が背景などを深く丁寧には説明していないと指摘。「羅列した政策の導入に名前を使っているだけで、その人物の魅力は伝わってこない」と話す。 (川口安子)

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