首相施政方針 政治不信を払拭してこそ

西日本新聞 オピニオン面

 政治に対し国民が抱く疑念や不信については何も語らず、明るい夢や将来の希望を語っても説得力に乏しい。国会で審議する予算や政策の前提となる政治の信頼回復に取り組む姿勢を示すべきではなかったか。

 通常国会が召集され、安倍晋三首相が施政方針演説をした。冒頭で今年の東京五輪・パラリンピックに触れ、「世界中に感動を与える最高の大会」として成功させ、「国民一丸となって新しい時代へと踏み出していこう」と呼び掛けた。

 東日本大震災からの復興に温かい支援の手を差し伸べてくれた世界の方々に感謝の気持ちを表す「復興五輪」でもあると、首相は明確に位置付けた。

 五輪開催国のリーダーとして当然の決意表明であろう。

 2012年に政権を奪還して以降、首相が施政方針演説をするのは実に8回目だ。首相在職日数の記録を更新している長期政権の証しともいえよう。

 「地方創生」「アベノミクス」「1億総活躍社会」「全世代型社会保障」「積極的平和主義」「戦後外交の総決算」…。長期政権の歩みを彩ってきた看板政策が演説の随所にちりばめられた。同時に、それらの政策課題の多くが現在進行形であることにも気付かされる。

 演説の締めくくりは例によって憲法改正への呼び掛けだ。首相は改正案を示すのは「国会議員の責任」だとして憲法審査会での議論を訴えた。

 違和感を禁じ得ないのは、首相の公私混同と批判され、ずさんな公文書の取り扱いも浮き彫りになっている「桜を見る会」や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件に一切触れなかったことだ。

 いずれも政権運営にとって逆風の案件であり、言及したくないという心情は推察できる。それでも国会冒頭の首相演説で、完全に無視するかのように素通りとはいかがなものか。

 共同通信社の世論調査によれば、桜を見る会について首相が「十分説明をしていると思わない」とする回答は86%以上に及んだ。汚職事件を受けてIR整備については70%以上が「見直すべきだ」と回答している。

 国民の声に率直に耳を傾けるなら、首相はもっと積極的に説明すべきではなかったか。

 公選法違反疑惑が報道され辞任した元閣僚らが久々に報道陣の前に姿を見せた。「捜査に支障がある」として具体的な説明は避け、自民党離党や議員辞職はきっぱりと否定している。これでは国民の不信は増幅するばかりである。国政の土台を揺るがす数々の疑念を払拭(ふっしょく)できるのか。長期政権を築いた首相の政治姿勢が改めて問われよう。

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