【きょうのテーマ】プラごみ問題、アートで発信 海で回収したごみを作品に

西日本新聞 こども面

アーティスト柴田みなみさんと一緒に

 プラスチックごみ(プラごみ)による海洋汚染が世界的な問題になっています。福岡市在住のアーティスト、柴田みなみさんは、海岸に流れ着いたプラごみなどで制作した海の生き物のオブジェ(芸術作品)を通じて汚染防止を訴え、注目を集めています。こども記者が柴田さんの工房がある今津(福岡市西区)の長浜海岸で、一緒にプラごみを拾って魚をテーマにした作品作りに挑戦し、環境問題について考えました。

【紙面PDF】きょうのテーマ プラごみ問題、アートで発信

 松林を抜けて海岸に出ると美しい海が広がっていた。「すてきな風景でしょう。でも砂浜をよく見回してみて」という柴田さんの言葉に足元を見ると、赤や黄色などさまざまな色のペットボトルのキャップや弾力のあるゴムボールなどのごみが散らばっていた。

 柴田さんは週に数日、2枚の中ごみ袋(容量20リットル)を持って海岸を歩き、作品用とそれ以外のごみを分けて回収している。私たちも砂が落ちやすい野菜用の網袋を2枚持って、1時間ほど清掃もかねてプラごみを拾った。

 集まったごみの量と種類を見て驚いた。シャンプーの容器、絡まった釣り糸、長いロープが結ばれた大きな黒い球…。電話の市外局番らしき数字が並んだ板のかけらも。調べると京都の番号だった。

 こびりつく白い粒

 集めたプラごみを柴田さんの工房に運んだ。材料にしないごみはリサイクルにまわす。作品を作る前に材料をざるに入れて水で洗うと、白い粒が手にこびりついて落ちない。柴田さんが「細かく砕かれた発泡スチロールだよ」と教えてくれた。この粒を魚がたくさん飲み込んだら-。考えただけでぞっとした。

 工房に入ると、天井から大小さまざまな形をした柴田さんが作った海の生き物たちがぶら下がっていた。鮮やかな色の数だけプラごみの種類があると感じた。鯨の形をした作品に、柴田さんがスマートフォンにつないだ。組み込まれたスピーカーから心地よい音楽が流れ、さらにやる気が出た。

 新たな命吹き込む

 柴田さんが針金で作った魚型の枠を自分の好みの形に変えていく。細身にすればサンマ、広げればタイのようだ。「うまく目を入れると魚に表情が生まれ“イキモノ感”がよく出るよ」など柴田さんのアドバイスを受けながら、枠にプラごみを針金で留め、布の切れ端などの廃材も使って1時間ほどで作品を仕上げた。

 できあがった魚を見せ合い、その表情に笑い合った。さっきまでごみだったものに新たな命が吹き込まれ、私たちの宝物になった。きちんとリサイクルされればプラごみは資源として役に立つ。「海の環境を守るために何ができるか考えて」。魚たちの声が聞こえたような気がした。

柴田さん「できることから行動を」

 柴田さんが海洋プラごみ問題に関心を持ったきっかけは、2013年に今津の海岸清掃活動をPRするポスターを制作するため、初めて活動に参加したことだ。「拾ったプラごみの量、重さを体感して、現実に起きている切実な問題として真剣に考え始めた」

 「地域や行政の人たちの努力のおかげで今津の海岸は6年前に比べるときれいになった」としながらも、世界的なプラごみによる海の汚染が「これ以上ひどくなるということは絶対にあってはいけない。人間の過ちをただし、解決できるのは人間だけ。今ある生活を大きく変えることはとても難しいが、減らすアクションを起こさないと何も始まらない」と力を込めた。

 プラごみアートを通じて目指していることを聞いた。「アートは言語、国、性別、年齢などあらゆる境界をいとも簡単に越える。地球に生きる者同士が『自分ひとりじゃ何も変わらない』ではなく『できることをやろう』と行動につながるメッセージを作品で伝えたいです」

海洋プラスチックごみ問題】環境省がまとめた2019年版「環境・循環型社会・生物多様性白書(環境白書)」によると、世界では約800万トンのプラごみが海に流れだしていて、生き物がのみ込んで死ぬなどの深刻な影響が出ている。昨年6月、大阪市で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、海洋プラごみを減らすため速やかに行動することが首脳宣言に盛り込まれた。

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