首相演説「フェイク」批判も 地方創生成功例は転出、最高税収も暗雲

西日本新聞 一面 河合 仁志 湯之前 八州

 安倍晋三首相が20日に行った施政方針演説で、正確性に欠ける内容が複数含まれていた。演説では、政府が推進する「地方創生」や「アベノミクス」などの成果について、具体例を挙げて強調したが、誤解を招きかねない表現が散見され、野党からは「フェイク(うその)演説だ」との批判も。通常国会の焦点になる可能性もある。

 首相は地方創生を巡り、島根県江津(ごうつ)市で若者の移住や起業支援をしたことで転入者が転出者を上回る人口の社会増が実現したと紹介。移住した男性の実名を挙げ「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が、移住の決め手となった」と言及した。

 だが現在、男性は江津市に住んでいないことが判明。市は西日本新聞の取材に「家庭の都合で転居された。(起業した会社に)在籍しているかどうか分からない」と答えた。

 菅義偉官房長官は20日の記者会見で、演説前に本人に確認したとした上で「起業支援の成功例として演説で紹介するのは問題ない」と述べ、男性に関する記述の妥当性を強調した。

 首相が演説で「来年度予算の税収は過去最高となった。公債発行は8年連続での減額」と述べた部分にも疑問が持たれている。

 政府が今国会に提出する2020年度予算案では、税収は63兆5130億円と過去最高を見込んでいるものの、あくまで予算上の試算。実際、昨年の施政方針演説で「過去最高」とした19年度予算案の税収は既に下方修正され、20年度予算も修正される可能性がある。「8年連続での減額」とした新規国債の発行額についても、収支が確定した決算ベースでは減額し続けておらず、年度ごとに増減を繰り返している。

 昨年10月の台風19号の際に「(群馬県の)八ツ場(やんば)ダムが利根川の被害防止に役立った」との演説内容も、正確性を欠く。当時、試験湛水(たんすい)中だった八ツ場ダム単体による防災効果が確認されていないからだ。

 立憲民主党の中堅は「事実に基づく情報が(首相らに)上がらないのは恐ろしいことだ」と指摘し、政府や首相の姿勢を追及していく構えを見せた。 (河合仁志、湯之前八州)

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ