僧侶、別の宗派で葬儀いいの? 業者が紹介、遺族知らず「ショック」

西日本新聞 社会面 久 知邦

 「別の宗派になりすまして葬儀をするカメレオンみたいな寺院がある」。特命取材班にそんな情報が寄せられた。信仰する宗派として葬儀社から紹介された僧侶が実は別の宗派だったことが分かり、「亡くなった親に申し訳ない」と落ち込む遺族もいるという。取材を進めると、檀家(だんか)制度や葬儀、信仰を取り巻く環境の変化が見えてきた。

 浄土真宗の寺院でつくる福岡県内の組合によると、20年ほど前から県内にある真言宗の寺院の一つが浄土真宗の葬儀も行うようになった。遺族が納得していれば問題ないが、「浄土真宗の資格がないとは知らなかった」「深く傷ついた」との相談が近年、福岡都市圏で目立つという。

 関係者を通じて、ある遺族が取材に応じた。浄土真宗で葬儀を営んだつもりが、不審に思って調べると真言宗の寺院と判明。「本当にショック」で涙がこぼれたという。別の遺族は「葬儀社に紹介されれば疑いようがない」と話した。

 この寺院を訪ねた。寺の名前を記した看板に「真言宗」の文字はない。住職に取材を申し込むと、こう言った。「よその宗派のお経を上げてはいけないという法律がありますか?」

       ■

 阿弥陀如来、大日如来、釈迦(しゃか)如来-。寺院が運営する会館の大広間には複数の本尊が並んでいた。

 住職は「お釈迦様の教えを実践していくために宗派の別を問わず活動している」と話す。住職も副住職も僧侶の資格である僧籍は真言宗しか持たない。副住職は大学で浄土真宗を学び、住職も他宗派に通じているとし、法名や戒名も求めに応じて柔軟に付けているという。

 こうした方針を葬儀社を通して遺族に十分説明してもらっており、宗派は偽っていないと強調する。「うそを言うてしよれば問題だが、喪主は納得しとる。何のお経を上げようと信教の自由」と主張。トラブルが起きていると指摘すると、「親戚から後で宗派が違うと問題視されたか、葬儀社の説明不足が原因だ」と話した。

 寺の総本山に問題はないのか尋ねると、真言宗の教義を守ることと他宗派の教えも取り入れることは両立するとし、「方便として用いられている面もあるようだが、総本山としてこの寺の活動を否定するものではない」という。

       ■

 宗派にこだわらない寺院が出現した背景には時代の変化もある。

 核家族化や都市部への人口集中で親の信仰が継承されず、寺院と人々のつながりを支える檀家制度は崩れつつある。2015年に民間企業がインターネット上で40~80代の男女500人に行った調査では、自身が「檀家」と答えた人は36%。「寄付が頻繁」など菩提(ぼだい)寺への不満も目立った。

 「若い人はほとんど宗派を知らん。こうせえ、ああせえ言わん寺の方が付き合いやすい。本堂は2億円かかったが、一切寄付は募っていない」と住職は話す。

 紹介する葬儀社の都合はどうか。複数社によると、葬儀の小規模化や低価格化が進み、初七日や四十九日の法要を葬儀と一緒に行いたいといった要望も多い。

 火葬のみ行う直葬も含め大切な人との別れ方は多様化している。「文句一つ言わず客のニーズに対応してくれる寺はありがたい」「宗派や作法より価格を重視する人は増えている」という側面もあるという。

 望んでいない宗派の寺院を紹介されたと遺族が訴えている問題について、ある葬儀社は「ちゃんと説明しても大切な人の死で混乱していることがある」と説明。一方で、別の葬儀社は「宗派を問わず活動する寺院はトラブルの元。積極的には薦めない」と話す。

 多宗派の寺院でつくる日本仏教協会(東京)などによると、全国に約7万7千件ある寺院のうち4分の1は空き寺で、都市部以外は廃れるともいわれる。僧侶派遣業者も登場し、マンションから葬儀に行く「マンション坊主」もいる。

 中根善弘代表は「終活の中で宗派を子に伝え、葬儀社任せにせずしっかり確認することが大切。宗教離れには心のよりどころになれなかった寺院側の問題もある。地域の人の身近な場所になれるかどうかが問われている」と話した。 (久知邦)

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ