五輪まで半年 「共生社会」へ準備も急げ

西日本新聞 オピニオン面

 いよいよ本番まで秒読みの段階に入った。東京五輪が開幕する7月24日まで、明日で残り半年となる。

 世界最大のスポーツ祭典である五輪に1万1千人、8月25日開幕のパラリンピックには4400人の選手が集う。限界に挑むトップアスリートの競技を通じて、世界を結ぶスポーツの魅力を示す大会にしたい。

 まずは最高のパフォーマンスを実現してもらうことこそ重要だ。「選手第一」の視点で、暑さ対策や厳格な薬物検査体制の構築、ボランティア約8万人の効果的運用などに入念な準備と点検が欠かせない。1千万人近い訪日客も見込まれており、会場周辺の混雑緩和も課題だ。

 競技会場がある1都1道7県からは遠く離れた九州だが、準備すべき舞台はある。「ホストタウン」(全国約500自治体)として約60自治体が事前合宿や事後交流の現場となる。

 五輪・パラの開催は社会変革のチャンスといわれる。56年前の東京五輪は新幹線や高速道など主にインフラ面の整備が日本社会を大きく変えた。今回、大会組織委員会は「共生社会の実現」を目標に掲げている。

 例えば、福岡県田川市は炭鉱の産業遺産という共通点でスポーツ少年交流を続けてきたドイツの車いすフェンシングチームを受け入れる。これを機に体育館の段差解消や、パラ競技ブラインドサッカーを全小学校9校で体験してもらうなど、ハード・ソフト両面でバリアフリー化を進める。「障がい者スポーツ推進都市」を目指すという。

 後世に引き継ぐレガシー(遺産)は選手の受け入れに伴う施策だけではない。スポーツへの関心が高まり親しむことによって住民の健康長寿効果も期待できる。大きな財産だろう。

 五輪・パラ期間中は世界の視線が日本に注がれる。九州にとっても魅力を発信するまたとない機会だ。観光は重要産業であり、伝統文化や「おもてなし」を存分にアピールしたい。「観光立国」にも資するはずだ。

 その意味で、関係者に検討を望みたいのは競技場以外の地方へ人が流れやすくする工夫だ。文化庁などが美術展や舞台公演を各地で開催している「日本博」は呼び水になるだろう。

 今回の五輪は東日本大震災からの「復興」が原点にあることも忘れてはならない。3月26日に始まる聖火リレーは原発事故が起こった福島県を出発する。九州は4月に大分県へ入り、5月の福岡県まで全域を巡る。ぜひ温かい声援を送りたい。

 誰もが互いを応援し、拍手し合えるような関係を実感できたとき、大会成功と共生社会が近づいたと言えるのではないか。

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