入院中患者に寄り添うファシリティードッグ 元気づける姿に感謝の声も

西日本新聞 こども面

 こども特派員の清武琳さん(11)=第9期のこども記者=が入院中の患者に寄り添うファシリティードッグ「ベイリー」(12歳、オス)の取材を実現しました。自らも病気と闘う清武さん。2018年10月にベイリーが引退する新聞記事を読んで興味を抱き、取材に強い意欲を持っていました。訪れたのは、神奈川県立こども医療センター(横浜市)。ファシリティードッグと共に仕事をするハンドラーの森田優子さん(38)と、ベイリーの後輩「アニー」(3歳、メス)も待っててくれました。清武さんの報告(ほうこく)と感想です。

【紙面PDF】入院中患者に寄り添うファシリティードッグ

 ファシリティードッグとは、病院に勤務する犬のことだ。入院している子どもたちの心を落ち着かせたり、元気づけたりする。ベイリーやアニーがとなりにいると、注射や痛い検査を頑張ることができる子もいる。足のリハビリの歩く練習で一緒に犬のリードを持つと、前の日の倍も歩けるようになる子もいたという。「ベイリーは最高の薬」と言ってくれる患者さんもいる。

 森田さんとアニーは週5日、同センターに出勤し、毎日10~20人の子どもとふれあう。ベイリーは人間でいえば80代。高齢のため引退し、森田さんとアニーが働く間は病院の中でのんびりと過ごしている。

    ★  ★

 ベイリーとアニーはオーストラリアで生まれ、米国・ハワイのトレーニングセンターで森田さんと一緒に訓練を受けて日本に来た。ファシリティードッグは60種類以上のコマンド(指示)を覚え、ハンドラーにしっかり従う。子どもがなでやすいようにベッドにあごを乗せたり、添い寝をしたりする病院ならではのコマンドもあるという。

 ベイリーの性格はマイペース。子どもや親のつらい気持ちを読み取り、自分から近づいていく不思議な力を持っている。アニーは動きが機敏で、新しいコマンドもすぐに覚えて賢いそうだ。

    ★  ★

 ファシリティードッグは米国では毎年100頭以上が誕生しているが、日本ではまだ3カ所の病院にしかいない。2010年1月に静岡県立こども病院(静岡市)で初めて正式に導入され、森田さんとベイリーが本格的に仕事を始めた。しかし、日本では初めてのことなので大変なことも多かったという。毎日忙しく働くつもりが、最初はベイリーが入れてもらえる病棟が一つしかなく、週3日の午後しか子どもたちに会えなかったそうだ。

 森田さんとベイリーはその後、神奈川県立こども医療センターに移ったけれど、今では感染症を防ぐために特別な対策をしている病棟や、命に危険のある患者がいる集中治療室(ICU)にも入ることができる。病棟に入る前後にきれいに体を拭き、ワクチン接種をして対策しているからだ。犬が人にうつす病気もほとんどない。犬アレルギーや感染症の心配がある患者は、医師が事前に把握しておけば大丈夫だという。

    ★  ★

 森田さんの現在の目標は「ファシリティードッグの存在と役割を多くの人に知ってもらうこと」。犬とペアで仕事をするハンドラーは、森田さんのように看護師などの資格と経験が必要。テストや面接、半年間の研修もある。ハンドラーになりたい人に伝えたいことを聞くと、「ハンドラーは犬を導入する病院が決まってから必要になる。まずは、自分が今働いている病院に導入を働きかけてほしい」と答えてくれた。

■いつか全国の闘病中の仲間に… 清武特派員の取材後記

 ファシリティードッグと会って一番印象に残ったことは、病院にいる仕事中はしっかりしているけれど、お散歩に行ったときは森田さんを引っ張っていて「普通の犬」だったことだ。でもやっぱりすごいと思ったのは、ほかの犬がワンワン吠えてきても吠え返さないところ。僕が飼っている犬のチョコは、ほかの犬と会っただけで吠え続ける。

 森田さんは1人で2頭(ベイリーとアニー)の大型犬の世話をしている。病院だけでなく家でも一緒に暮らし、散歩は1日2回、シャンプーも週1回する。休日は海や公園、山など自然の多いところに行って2頭を喜ばせるという。

 僕は背骨が曲がる脊柱側彎症という病気の手術のため、年2回福岡市立こども病院に入院している。毎回全身麻酔で背中を開く手術を高校生ごろまで続ける。採血などの痛い検査や手術の前がとても不安だ。今年1月の13回目の手術でも、前の夜は2時間近く涙が止まらず、当日の朝は緊張で熱がどんどん上がった。

 また、病院では手術前に泣き叫んでいる子を見たことがある。病棟の入り口では、家族から引き離されて泣いている子もいた。数カ月の入院で学校の友達に会えない子もいる。そんなとき、「ファシリティードッグがいて、なぐさめてくれたらいいな」と思う。

 病気と闘う子どもはみんな僕の仲間だ。全国の病院にいる仲間たちのために、日本中のこども病院でファシリティードッグが活躍できる日がくることを願っている。

 それと、僕が入院している病院には犬はいないけれど、プロスポーツ選手の訪問や七夕会などの季節の行事、工作教室もある。僕たちの心が元気になるように、たくさんのことをしてくれる病院のみなさんにとても感謝している。

PR

こどもタイムズ アクセスランキング

PR

注目のテーマ