脱出試みる市民、駅に殺到 新型肺炎広がる武漢 異例の封鎖

西日本新聞 総合面 川原田 健雄

 【北京・川原田健雄】新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受け中国当局は23日、湖北省武漢市を事実上、封鎖する異例の措置に踏み切った。現地では封鎖前に市外へ出ようとする市民が駅に殺到。物流が遮断される不安から食料を買い占める動きも見られた。春節(旧正月)の大移動が本格化する中、習近平指導部はウイルスの封じ込めを急ぐが、対応が後手に回った印象は否めない。

物流遮断懸念、買い占めも

 「食料を確保しようと市場に行ったが、野菜はほとんど売り切れだった」。電話取材に応じた武漢市内の男性(37)は戸惑いをあらわにした。妻子、両親との5人暮らし。わずかに残った野菜は値段が高騰していたが「家族全員分を確保するには買うしかなかった」。

 街を歩く人は皆マスクを着用。男性も高機能マスクを大量に確保したが、いつまで封鎖が続くか見通せず、不安は尽きない。「解除された後、武漢市民は病原菌を見るような目で見られないだろうか」と懸念を口にした。

 武漢市当局が封鎖を発表したのは当日23日の未明。香港メディアは、早朝から高速鉄道の切符を求めて武漢駅に住民が詰めかけたと伝えた。武漢市は各省や主要都市を結ぶ幹線道路や鉄道が通る交通の要衝。短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」には、乗り換えの駅で足止めされ戸惑う人々や、黒いマスク姿の大勢の警官隊が駅前に並んで人の出入りを制限する動画が投稿された。

 市中心部では地下鉄のシャッターが下ろされ、高速道路も多くの料金所が封鎖された。武漢市民の間では「軍が消毒剤を散布するから外出しない方がいい」といったデマも飛び交った。

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 人口約1100万人の大都市を封鎖する異例の措置は、習指導部の強い危機感の表れと言える。2002年11月に広東省で重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した際は、情報が隠されたまま03年2月の春節を迎え、大流行につながった。対応を誤れば国内外からの厳しい批判は避けられないだけに、習国家主席はなりふり構わず封じ込めを図っている。

 ただ、今回も中国当局が情報公開にかじを切ったのは、習氏が「感染のまん延を断固として抑え込め」と重要指示を出した20日から。それまで武漢市以外の各地方政府は発症者情報を公表していなかった。中国側は発症者数の急増は検査方法が改善されたためだと説明しているが、トップの判断が出るまで動かない官僚体質を改めて浮き彫りにした格好だ。

 微博には「自分の職務を果たしていない役人がいる」「責任を追及すべきだ」といった政府批判の一方、「今は心を一つにする時だ」と団結を促す投稿も目立つ。習指導部は中国全土で空港の防疫体制を強化し、感染拡大を食い止める構えだが、春節前後は延べ30億人の移動が見込まれ、どこまで封じ込められるかは見通せない。武漢市の封鎖は期限が決まっておらず、長期化すれば政府批判がさらに高まるのは避けられない情勢だ。

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