中国の新型肺炎 冷静に感染防止の徹底を

西日本新聞 オピニオン面

 中国湖北省武漢市で始まった新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が止まらない。中国当局は「人から人への感染」を認めている。深刻な事態だ。

 中国当局の23日午前の発表では、発症者は570人を超え、死者は17人に増えた。日本をはじめ台湾やタイ、米国などにも飛び火している。

 武漢市当局はきのう、武漢から出発する航空便や列車を停止し、住民の移動を大幅に制限する異例の措置に踏み切った。世界保健機関(WHO)も連日、緊急委員会を開催し対応を協議している。

 2003年を思い出す。重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国からアジア諸国やカナダに広がった。この際は中国政府の情報公開の遅れが感染拡大を招いたとの批判がある。国際社会で最新の情報を共有し、歩調を合わせて新型ウイルスの拡散を防ぐことが肝要だ。中国政府には今回、SARSの教訓を生かすことを強く求めたい。

 03年当時と比べ、中国国内外の人的交流は桁違いに大きくなっている。とりわけ中国からの訪日客の増加は目を引く。昨年は約960万人に上り、03年比で20倍以上にもなった。

 中国はきょうから春節(旧正月)の大型連休が始まる。今年も大勢の観光客が日本を訪れるはずだ。港湾や空港の検疫を徹底するとともに、医療機関は発症を想定した態勢を整えたい。

 特に「アジアの玄関口」である九州は警戒レベルを引き上げる必要がある。観光施設の来場者にマスク着用を促すといった感染防止を徹底してほしい。

 これまでのところSARSや中東呼吸器症候群(MERS)といったコロナウイルスの感染症と比べると、新型ウイルスの感染力は弱く、症状も比較的軽いケースが多いようだ。

 それでも持病がある高齢者などが感染すると、深刻な症状になりかねない。ウイルスの遺伝子が変異し、より強い感染力や毒性を持つ可能性もある。

 私たち市民は冷静に注意深く状況を見守り、正しい知識に基づいて対応したい。

 新型ウイルスはインフルエンザウイルスと同様、せきやくしゃみと一緒に排出され、別の人の鼻や口から入って感染が広がる。小まめな手洗いやマスクの着用などが感染を防ぐ基本的な手段となる。

 今夏には東京五輪・パラリンピックが開催される。世界各国からやって来る大勢の人々は、国内各地の観光地なども訪ねるだろう。今後も国境を越えた人の動きは加速するとみられる。水際での検疫や防疫、検査・治療体制の充実は、日本社会の大きな課題だと指摘したい。

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