産業継承へ二人三脚の靴下づくり 専門店経営の夫妻 福岡・六本松

西日本新聞 ふくおか都市圏版 郷 達也

 年代物の靴下編み機のレプリカや、仕上げ前の何十足とつながった靴下…。福岡市中央区六本松の閑静な住宅街に昨秋オープンした靴下専門店は、靴下の歴史や文化に触れられる、さながら「靴下博物館」だ。切り盛りするのは、日本一の靴下生産地である奈良県から移住してきた綾部舜(しゅん)さん(28)、光里(みさと)さん(28)夫妻。「町中から消えてしまった靴下の編み機の音をまた響かせたい」。福岡を拠点に靴下産業の発信、継承へ奔走している。

 「六本松のくつした屋さん How's That(ハウズ ザット)」は、レトロな木造アパートの一室にある。「タンスに戻ってくるのが待ち遠しい靴下」をブランドコンセプトにかかとをすっぽりと包み、優しい肌触りと鮮やかな色合いの商品群は見ているだけでもどこかほっとする。

 2人が生まれ育ったのは奈良県広陵町。同町を中心に奈良県は靴下の国内生産4割を占める最大産地で、光里さんの実家も老舗の靴下工場だ。かつては、町を歩けば「ウィーン」という編み機の音やプレス音が響き、作業車が工場間を行き交っていた。

 舜さんは糸商社へ就職、光里さんは家業の靴下工場に就いた。小学校の同級生だった2人は、とある販売イベントで十数年ぶりに再会。職人の高齢化やなり手不足、海外産の大量生産など衰退する靴下業界の現状を語り合った。「自分たちがはきたいと思う靴下づくりを」とオリジナルブランドの立ち上げでも意気投合。それをきっかけに昨年、結婚した。舜さんの父の実家がある福岡への移住を経て、店舗開店にこぎつけた。

 店内で靴下のことを尋ねれば、2人からほぼ「満額回答」が返ってくる。光里さんは、奈良県靴下工業協同組合が独自に認定する「靴下ソムリエ」の1人。歴史や編み方の紹介、消費者に靴下の着用シーンを提案して市場を活性化させる狙いだ。編み機のレプリカは、靴下が実際にどうやって編まれるかを見ることができる。「作るだけでなく、伝えることも工場に生まれ育った者の使命です」。光里さんは力を込める。

 2人は商品デザインや企画、検品、販売を担い、製品作りは奈良の工場で職人が担当。編み機1台で編む靴下は通常の半分以下の1日50足にとどめている。「高速で編めば糸が消耗する。ゆっくり編むことで糸に負担をかけず、履き心地も良くなるから」と舜さん。

 2人は公私ともに信頼し合うパートナー。奈良から遠く離れた九州との縁も糸が紡いだ。「工場見学ができて、靴下を縫う体験もできる生産拠点を福岡に」。二人三脚の靴下づくりの情熱は、尽きることがない。 (郷達也)

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「六本松のくつした屋さん How's That(ハウズ ザット)」のホームページはこちら

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