「先生の鼻毛、出てたら注意する?」 共生教育意外な質問から

西日本新聞 社会面 四宮 淳平

 発達障害の子どもたちを受け入れる特別支援学級の自閉症・情緒障害クラスの所属数が増えている。障害への認知が広がり、支援学級で学ぶことのハードルが下がったことなどが背景にあるとみられるが、障害の有無にかかわらず一緒に学ぶ「インクルーシブ(共生)教育」の理念とは異なるという指摘もある。24日に広島市内で始まった日教組の教育研究全国集会で、共生教育の在り方が議論された。

 報告したのは鹿児島県の高校の女性教師(44)。発達障害があるA男さんと級友の間でトラブルが起きたのは、新学期早々だった。

 「勝手に筆箱を触られた」「汚い」。無料通信アプリLINE(ライン)でA男さんは級友に批判され、苦痛で高校を休み始めた。その時、教師は授業でA男さんへの印象を尋ねてみることにした。

 不満が次々と出された後、教師は質問した。「私の鼻毛が出ていたら注意しますか」。意外な質問に一斉に笑いが起きる中、教師は続けた。「A男なら大声で注意する。その特徴は注意すれば改善されるものではない」。教師の思いに応えるように、生徒から意見が出た。「自分らが慣れるしかない」。この話をきっかけにクラスの雰囲気が変化していく。

 A男さんは大人数の前で見当外れな発言をする。笑われても気にしない。以前なら「空気を読めないやつ」という級友の評価は「前向きな人」に変わった。失敗を恐れない姿勢や笑いが周囲を和ませ、A男さんも自信を深めていった。

 教師は「以前はもっと頑張れと指導していたけど、誰しも頑張ってもできないことはあるんだと思えた」。同僚から「A男さんへの指導を通じ、人間としての器を広げてもらったね」と言われたという。

 共生教育について、文部科学省は2012年に方針を出している。同じ場で共に学ぶことと、教育的ニーズに的確に応える指導を同時に掲げるが、狙いが両立しているとは言いがたい。

 特別支援学級の自閉症・情緒障害クラスに所属する全国の小中学生は14年の約8万2千人から、19年は約13万5千人に急増。文科省は通常学級、支援学級、支援学校など「多様な学びの場」を用意する必要性を指摘する。

 本来は、多様な子どもを集めた学級でも個々のニーズに応えられる教育環境こそが、学校現場に求められている。教研集会では「迷惑だから、あなたの将来のためだから、と普通教室から分離させている現実が差別そのものではないか」という声も出た。 (四宮淳平)

PR

教育 アクセスランキング

PR

注目のテーマ