文政権対韓国検察が激化

西日本新聞 国際面 池田 郷

 【ソウル池田郷】韓国の文在寅(ムンジェイン)政権と検察の対立が激化している。政府や与党が検察の捜査権を狭める法改正や幹部の「左遷人事」で攻勢を強めるのに対し、検察側も文大統領の元側近で親族の不正疑惑で辞任した〓国(チョグク)前法相や政権高官の関与が疑われる複数の事件の徹底捜査で対抗。革新系の文政権と検察の対立は根深く、1980年代まで続いた軍事独裁政権下で検察が民主化勢力を弾圧した歴史も色濃く反映している。

巨悪

 昨年末に成立した検察改革関連法は、政治家や高官への捜査権と一部の起訴権を検察から独立機関「高官犯罪捜査庁」へ移行するのが柱だ。同庁トップは最終的に大統領が選ぶ仕組み。検察や野党は「政権が捜査権を掌握する悪法」と批判するが、文政権は4月の総選挙で検察改革を成果としてアピールする構えだ。

 文政権が検察との対決姿勢を強めるのは、革新層だけでなく中道層にも検察改革の必要性が共有されているからだ。映画やドラマでは、検察が政治権力や財閥と結託して巨悪を見逃し、弱者をおとしめる場面が定番のように描かれる。映画関係者は「国民の多くに検察不信が共通認識としてあるからだ」と説明する。

87年

 1987年の民主化運動を描いた2018年公開の映画「1987、ある闘いの真実」でも検察組織の腐敗ぶりを表す史実が重要な要素として盛り込まれた。検察上層部などは学生運動のリーダーが警察の拷問によって死亡した事件のもみ消しを図る。だが一部の検事や報道などによって事実が暴露され、民主化運動のうねりは全国に拡大した。

 韓国には検察の絶大な権力をやゆした「検察共和国」という言葉もある。過去の保守政権は検察の権力を政権維持に利用。民主化勢力の捜査に消極的な検事を退任に追い込み、政権寄りの幹部を出世させる露骨な人事を行ってきた。

世論

 文氏が検察弱体化に血道を上げるのは自身の経験も背景にあるとされる。同じ人権派弁護士出身で「政治の師」と仰ぐ盧武鉉(ノムヒョン)元大統領は検察改革の途上で退任。不正資金を巡る検察の追及を受けて自殺した。

 文氏の執念は人事にも及ぶ。〓氏の後任の秋美愛(チュミエ)法相は今月、尹錫悦(ユンソクヨル)検事総長に近い最高検幹部のほか、〓氏の疑惑や大統領府による地方選挙介入疑惑を巡る捜査を指揮する検察幹部らを地方に異動させる人事を相次ぎ発表。これらの人事は尹氏の頭越しに決められたとされる。

 ただ、検察改革を支持する世論も、文氏の身内をかばうような姿勢には冷ややかだ。文氏は14日の記者会見で「もう国民も〓氏を自由にしてほしい」と発言。直後の世論調査で支持率は前週比3・7ポイント減の45・1%、不支持率が同4・7ポイント増の51・2%となり、政権に都合のいい言動を世論がいさめた格好だ。

※〓は「十の下に田、下に日」

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