【DC街角ストーリー】“白い粉”入りの封筒

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 新年早々、支局のあるワシントンDCやその近郊で、何かと物騒な出来事が続いている。

 2日(米国時間)に米軍がイランの司令官を殺害した後、ホワイトハウスや政府機関の周辺では、テロ警戒の大統領警護隊(シークレットサービス)や警官の数が明らかに増えた。日米防衛相会談があった国防総省に入る前の荷物検査は、2種類の検知器と犬によって3回もチェックされ、いつにも増して厳重だった。

 20日には私が住む南部バージニア州で銃規制に反対する大規模な集会があり、会場周辺には実際に銃を手にした人も集まった。銃撃事件はワシントンも含め全米で日常茶飯事だが、集会では過激派による銃乱射も懸念された。幸い何もなかったが、心穏やかではいられない。

    ☆   ☆

 今年は4年に1度の大統領選の年。トランプ大統領の再選を巡っても騒々しい事態が続くことは避けられそうにない。

 昨年末に出張した中西部に、2016年の選挙でトランプ氏を支持したが今回は支持しないという男性がいた。住所が分かったので取材依頼の手紙を出したところ、男性の知人を名乗る女性から電話がかかってきた。「この手紙は何なのか」と。

 男性は見知らぬ人物から突然届いた白い封筒を見て「(毒物など)『白い粉』が入っているかも」と疑い、封を切っていなかった。相談を受けた女性が封筒に書いていた私の携帯番号に電話をかけてきたのだった。

 「男性はトランプ氏を支持しないと公言して以来、何度も脅迫電話を受けている」。男性が手紙を不審に思った理由を、女性が説明した。改めて取材の趣旨を男性に伝えてほしいと求めたが結局、返事はなかった。

 この話を出張先のトランプ氏の支持者たちに伝えると、逆に「私たちだって嫌がらせを受けている」と反論された。

 トランプ氏の決めぜりふ「米国を再び偉大に」の頭文字にちなんで「MAGA(マガ)ハット」と呼ばれる赤い帽子をかぶって歩けば怒声を浴びせられ、家の玄関先にトランプ氏支持の選挙用看板を立てると、引っこ抜かれて捨てられる…。

 トランプ氏が愚行を演じても「彼らしくていい」と問題視しない人、善行があってもかたくなに受け入れない人など、支持、不支持が感情的に大きく割れる米国には既に緊迫感が漂っている。「歴史的な選挙になるよ。いい時期に来たね」。取材先からよくこう言われるが、この先の混乱を想像すると素直に喜べず、苦笑しか浮かばない。

    ★   ★

 トランプ政権下、混迷が続く米国。11月の大統領選を含めこの1年は、特に超大国の進路を大きく左右する時期になりそうだ。そんな揺れる米社会の今を、全米の街角を歩きながら描く。 (ワシントン田中伸幸)

 =随時掲載

PR

国際 アクセスランキング

PR

注目のテーマ