完全予約制、立地も形態もメニューも”唯一無二”

西日本新聞 もっと九州面 小川 祥平

◆ラーメン のれんのヒストリー 替え玉(3) 御忍び麺処 nakamuLab.(福岡県那珂川市)

 完全予約制と聞けばすし、フレンチなど高級飲食店を想像するかもしれない。ところがその考えを覆すような店がある。福岡県那珂川市の「御忍び麺処nakamuLab(ナカムラボ).」は完全予約制のラーメン店。一昨年9月に開店したばかりだが、立地、形態、メニューを含めた“唯一無二”を求めて多くの麺好きが詰めかけている。

 福岡市中心部から車で30~40分。幹線道路から少し入ったところに店を構える。店と書いたが、いわゆる店舗とは違う。外観は普通の民家。玄関脇に立てかけられた木板の店名が目印だ。緊張しつつ、呼び鈴を鳴らした。玄関を開け、靴を脱いで廊下を抜ける。リビングにはカウンター席。その奥の台所で店主、中村聡志さん(33)が迎えてくれた。

 メニューにも違いを出す。「豚骨はライバルが多いから」と鶏がらベースのみ。この日は「鶏白湯(ぱいたん)soba」を選んでみた。

 「同時に1組しか対応できない。手間がかかるし、1人でやっているので」と言う。スープは酸化を防ぐため注文を受けてから温める。鶏と豚のチャーシューはその都度切り分ける。麺をゆでつつ、温まったスープをブレンダーでかき混ぜ、具材を載せていく。

 完成した一杯は、見た目からインパクトがある。メレンゲのように泡だったスープは軟らかな舌触り。鶏の濃厚さが前面に出るわけでなく、昆布、シイタケなど和だしが下支えする。酸味ある乾燥トマトのアクセントも新鮮だった。

 「『あの店に似てる』とかだったらわざわざここまで来てくれないでしょ」と笑う。知人宅に来たような雰囲気だからかいつの間にかこちらの緊張もほぐれていた。

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 「もともとはキックボクサーだったんですよ」

 中村さんは意外な経歴を口にした。会社員だった19歳の時に「もてるかも」と始めた。すぐに頭角を現した。1年でプロになり、戦績は6戦全勝。仕事を辞めて上京した。

 ただ、その後は思うような成績が残せない。格闘技ブームも下火となり「モチベーションが保てなくなった」。新たな人生を模索する中、選んだのがラーメンの世界だった。

 偶然にも東京にあった博多の老舗ラーメン店でバイトをしていた。店がシンガポールに展開する話を聞き、真っ先に手を上げたのだ。当時25歳。同国を皮切りに、いくつかの会社を渡り歩きながら米国、フィリピンで経験を積んだ。独立のために帰国したのは2年前。現在の場所を住居用に借りて物件探し。同時に試作を繰り返し、友人に振る舞っているとこう言われた。ここでやれば?

 「3カ月やってお客が来なかったら店舗を探そう」。そんな当初の懸念を吹き飛ばすように、ほかにない味とスタイルが口コミで広がった。店をたたむどころかオープン2カ月後から予約が途切れていないというから驚く。

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 格闘家からラーメンに。一貫性がない人生のように思えるが、意外にも計画的に人生を設計してきた。

 25歳でチャンピオンになれなかったらやめる。その後の5年はバックパッカーとして世界を回る-。

 キックボクシングを始めた時に自分の中でそう決めていた。ラーメンへの転身も、海外修行も、思い描いた流れの中にある。そして今、その先の計画していなかった人生を歩んでいる。

 現在の目標を聞くと「海外に自分の店を出す」と力強い。

 「格闘技でもチャンピオンに“なりたい”ではだめ。“なる”じゃないと」

 どちらも自分の腕一つで戦う職業。攻めの姿勢は変わっていないようだ。 (小川祥平)

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 福岡県那珂川市別所1067の8。鶏白湯soba780円。午前11時~午後3時、同5時~同9時。年中無休。

 予約は、電話=090(4358)1696、インスタグラム(@nakamulab.nakagawa)で。

 =月1回掲載

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