「献花だけでも」中村哲さんお別れ会に5000人 長蛇の列も祈り静かに

西日本新聞 阪口 彩子 横田 理美 黒田 加那

 それぞれが自分の持ち場で行動することが、平和につながるんだ-。25日に福岡市早良区の西南学院大で行われた中村哲さんのお別れ会には約5千人の参列者が詰めかけた。「献花だけでも」「どうしても来たかった」。会場に入ることができない人も少なくなかったが、一人一人が中村さんへの思いを胸に、静かに祈りを捧げていた。

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 開会は午後2時。正午ごろから主会場のチャペル前に人が並び始め、開会の30分前ごろには長蛇の列になった。

 キャリーケースを手に並んでいた大阪市の中学校教員木村隆さん(38)は、10年ほど前、教員としてのあり方に悩んでいたときに、中村さんの著作を読んだ。「中村さんのように誠実に子どもたちに向き合い、他人を思う気持ちを伝えたい」。

 チャペルに入りきらなかった参列者は、式を中継するための別室に案内された。しかし、その11室もすぐに満杯に。入れなかった人たちは共有スペースの大型テレビを囲み、会場の様子を見守った。開始15分前には列はさらに伸び、チャペルの外に急きょ、長テーブルを並べた祭壇が設けられた。

 福岡県筑前町の大刀洗平和記念館の山本孝館長(54)は「献花だけでも待つよ」。かつて同館が開いた企画展「火野葦平の世界」のために中村さんが執筆した寄稿文を手にしていた。「(葦平は)その人間らしい感覚が人々の共感を得た、と書かれているが、これは中村さんの生き方そのもの。読み返して心を揺さぶられた」

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 土曜日だったこともあり、全国から多くの人が訪れた。アフガニスタン出身で愛知県に住むズマリア・アサドラさん(40)は昨年12月の告別式にも来た。「中村さんは僕たちの家族だから。僕たちの国のことをいろいろやってくれて、言葉では言い表せない。僕たちはいつもお祈りしている。本当にありがとう」

 香川県高松市から電車と新幹線を乗り継いで来た会社員の中條直哉さん(33)は、昨年の告別式に参列できなかったので「この日だけはどうしても来たかった」。献花台では「先生お疲れさまでした」と声をかけた。

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 集まった人々は口々に、目の前の人のため地道に活動する中村さんの生き方への共感を語った。福岡市でフリースクールを運営する福永千恵美さん(59)は、「一人一人が自分にできることをやれば、世界は変わると教えてくれた。今度は私が子どもたちに伝えたい」と前を向く。

 「身近な活動の積み重ねで平和はつくれる。そんな希望をこの行列のみんなが共有していると感じます」と話すのは、北九州市小倉南区の有角裕理子さん(38)。札幌市から駆けつけた弟の拓矢さん(37)は「文化の異なる相手を認め合う大切さは、いろんな経歴を持ったお年寄りと関わる介護現場に通じるものがある」と、自身の仕事と重ね合わせた。「平和を願うこの行列が、みんなの心の中で明日もあさっても続いてほしいね」。顔を見合わせてほほえんだ。

 北九州市小倉北区の安田和俊さん(73)は、1輪の白いトルコキキョウを供えた。「柔らかいイメージが中村さんらしいと思って。きちんと献花できてよかった」(横田理美、阪口彩子、黒田加那)

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