インバウンド需要の波に 佐賀のテーマパークの戦略「アクセスが鍵だった」

西日本新聞 佐賀版 星野 楽

 佐賀県有田町の山あいに巨大な宮殿。近くの駐車場に大型バスが列をなし、中国人の団体客が降り立つ。

 有田焼と酒造のテーマパーク「有田ポーセリンパーク」。その宮殿は、焼き物を通じたドイツと有田との交流を表すシンボルだ。ガイドから1時間の滞在を告げられると、中国人客は足早に歩き出した。ただ宮殿まで向かわず、手前の建物に吸い込まれていく。

 家電、化粧品、高級腕時計…。建物内には商品が並び、中国語の値札が貼られている。長崎の佐世保港にクルーズ船が来港する日にだけ営業する免税店だ。

 「日本のお菓子や化粧品を買うのが楽しみ。もっとゆっくりしたいけど…」。会社の同僚と訪れた李世栄(リセイオン)さん(56)はまとめ買いしたチョコレートを持ってバスに乗り込んだ。

 1日で約140台のバスが来る日もあり、「旅行客のほとんどは免税店が目的」(女性従業員)という。

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 有田ポーセリンパークは長崎自動車道の全線開通から3年後の1993年、地元陶磁器メーカーなどの出資で開業。初年度は年間50万人以上が来場したが、その後は国内ツアー客の伸び悩みから苦戦。2003年、地元の酒造会社「宗政酒造」に運営が委ねられた。

 転機は14年。中国人富裕層が日用品や高級品を買い占める「爆買い」ブームが起き、パーク内に免税店を誘致。国内外の旅行会社などにツアーで立ち寄ってもらうように売り込みを掛け、インバウンド(訪日外国人客)需要の波に乗った。

 「高速道路とのアクセスが鍵だった」と宗政酒造の岸川健輔統括課長は話す。西九州自動車道を通れば佐世保港から車で約30分。約900台を収容する無料駐車場も、大型バスで移動するクルーズ観光にもってこいだった。

 ただ、クルーズ観光客は朝に佐世保港に着くと免税店などを巡り、夕方に佐世保に戻って船に宿泊。佐賀に泊まらずに通り過ぎ、県内にはお金が十分落ちない。中国人客や韓国人客が中心で、日本との関係悪化で客足が落ち込むリスクもある。

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 県内では、外国人の延べ宿泊者数が約39万人となり、12年以降は増加傾向にある。中でも、九州でトップの伸び率となったのがタイ人客だ。16年は延べ5830人で、3年前の約15倍に。格安航空会社の福岡―バンコク便を使った個人旅行客が中心で、佐賀にも泊まる。

 「きっかけは映画のロケです」。日本三大稲荷の一つ、祐徳稲荷神社(鹿島市)の鍋島朝寿宮司が明かす。境内にはタイ語の看板を掲げ、おみくじも置く。

 

 県の「県フィルムコミッション(FC)」が13年、福岡との直通便があり、観光ビザが免除されたタイに着目。祐徳稲荷神社などでのロケを誘致し、14年の映画上映で佐賀の知名度がアップした。

 タイに続いてフィリピン映画のロケ誘致にも成功。「次も東南アジアがターゲット」。FC担当主査の島松宗一郎さん(39)は3カ月に1度、海を渡る。だが、どこの国かは明かさない。「他の自治体との競争ですから」
 (星野楽)

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