「自由に遊ばせてやりたいが…」児童急増で教室不足に 佐賀県唐津市の小学校

西日本新聞 佐賀版 津留 恒星

 水曜日の昼休み、中学校の校庭で小学生が駆ける。虹の松原を望む鏡山の麓にある鏡中(佐賀県唐津市)。道路向かいの鏡山小の児童50人ほどがやってくる。広々とした場所で遊べるのは週1回。わずか20分、ドッジボールやサッカーを全力で楽しむ。

 「校庭で自由に遊ばせてやりたいが…」と鏡山小の渡辺謙教頭(51)。校庭には昨秋からプレハブが並び、工事車両が行き交う。校舎の現地建て替えに伴い、今春以降の仮校舎としてプレハブが建ち、中庭でしか遊べない。体育の授業も体育館か鏡中で行う。

 児童急増による教室不足などから建て替えが決定。鏡山小の児童は916人(昨年5月)で、県内の164校でトップ。ここ5年で児童が約150人も増えた。同じく900人超えの鍋島小(佐賀市)や弥生が丘小(鳥栖市)と比べても、最も伸びが大きい。

 新年度の児童は約960人で、約40人も増える見込み。渡辺教頭は「数年で千人を超すだろう」とみる。

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 今春、平河直さん(37)の長女も鏡山小に入学する。6年前、出身の福岡市から唐津市に移り住んだ。

 平河さんは自らの料理店を構える場所を探していた。自然が残り、商売もしやすそうな福岡県糸島市を中心に物件を回ったが、なかなか見つからない。

 さらに西へ―。唐津に踏み入り、自然だけでなく、唐津城など歴史や文化を感じさせる街並みが気に入った。「新鮮な魚や野菜が豊富。料理の表現に欠かせない焼き物もあった」

 福岡との距離感も決め手に。鏡地区の北に国道202号・唐津バイパス、南に西九州自動車道が通る。車で約1時間の福岡市中心部からも客を呼び込めると判断。2014年に移住し、15年に店を開いた。客の半分が唐津市外からで福岡の人が多いという。

 バイパス沿いに商業施設が並び、住宅開発が進む鏡地区。市への移住を促すネットワークステーションまつろの三笠旬太さん(32)は「子育て環境の良さや利便性の高さが注目されているようだ」と話す。

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 福岡市に近い東側で人口が増え、西側で減る。唐津市だけでなく、県全体でも同様だ。鳥栖市は伸び、有田町などは落ち込む。

 地方創生を議論する有田町役場での会議で「40年後に有田の人口は半減」と報告された。有田を拠点に移住を促すNPO法人「灯(とも)す屋」の佐々木元康代表理事(36)は冷静に受け止めた。「西側は誰もが好きな場所ではない。でも誰かにとってハッピーな街だ」

 東と西に向かう人の傾向をこう捉える。東を選ぶ人は利便性を重視し、佐賀から福岡への通勤を視野に入れる。西に向かう人は終(つい)の棲家(すみか)などを探し、焼き物のような文化に惹(ひ)かれる。

 灯す屋は毎月1回程度、有田への移住希望者を募り、空き家見学ツアーを開く。昨年は約70人が参加し、うち8人が町に移住。佐々木さんは、新たな生き方を描こうとする人に納得して暮らしてもらえるように、その思いに耳を傾ける。「有田に興味を持った人が集まって『面白い』となれば自然と人が人を呼ぶと思う」。いつか波のように人が寄せる日が来ると信じて。
 (津留恒星)
 =おわり

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