ジェーンズ邸の移築工事始まる 観光への活用策が焦点

西日本新聞 熊本版 長田 健吾

 熊本地震で全壊した熊本県指定重要文化財「洋学校教師館ジェーンズ邸」の4度目の移築工事が、予定より約1年遅れて6日から始まった。創建地の熊本城に近い熊本市新町地区の住民たちが城内に戻すよう要望してきたが、市は旧市立体育館跡の公園(中央区水前寺公園)での再建に踏み切った。2022年度の一般公開に向け、今後は観光資源としての活用策に議論の焦点が移ることになる。

 ジェーンズ邸は1871(明治4)年築の木造2階建てで、現存する県内最古の洋風建築。(1)現在、第一高校がある同市中央区古城町(2)南千反畑町(3)水道町(4)熊本地震で倒壊した時の水前寺公園(現在地)-へと移転してきた。

 市は幸山政史前市長の公約に基づき、創建地への移転を検討。2013年度の中心市街地活性化基本計画にも「当初の所在地に近い熊本城域周辺へ移築、復元し、資料館として活用する。中心市街地の活性化に必要」と記載した。

 しかし移築費の捻出が難しく計画が具体化しないまま、16年に熊本地震で倒壊。市は17年秋、国が67%を負担する災害復旧費補助金を活用し約6億8千万円かけて移築すると決めた。「創建地では手続きが間に合わない」などとして、移築先は被災した場所から約300メートル離れた電車通り沿いの公園を選んだ。

 市は、移築地を「市民や観光客等の来場者の増加が期待される。水前寺成趣園(じょうじゅえん)と江津湖をつなぐ拠点として観光や地域活性化の効果も期待できる」とする。

 ただ、「耐震性などの計画変更が必要だった」(市文化振興課)との理由などから、昨年3月に予定していた着工時期は今月までずれ込んだ。地震前の木材の7~8割が再利用可能。創建時と同じ設計では耐震性が不足するため、鉄柱などで補強して文化財としての価値と耐震性の両立を図ることにした。

 移築先の住民を対象にした昨年5月の説明会では、「水前寺地区に残ったことがうれしい」「移築後は、公園を含めた周遊ルートの設定をお願いしたい」と歓迎する声が出た。一方、「水前寺への移築はいつの時点で決まったのか。決定を知らない人が多かった」と周知不足を指摘する意見もあったという。

 また、移築後の活用法を尋ねた市民に対し、市の担当者が「詳細は未定。建物自体が展示物という認識で、地域の皆さまからもご意見やアイデアをいただきたい」と答えるなど、活用策が具体化していない状況も浮き彫りになった。

 新町地区の住民は、創建地に移築するよう大西一史市長宛ての5通の質問状や、1700人分の署名を提出してきた。一新まちづくりの会の橋本和彦会長は「(創建地と)関係ない場所に移築して本当に歴史的価値は変わらないのか」と無念さを吐露する。

 地震後に移築先が変わった結果、従来以上に観光資源としての役割が強調されているジェーンズ邸。創建地の人たちも納得できる活用策を提示し実行できるか、市の対応が改めて問われている。(長田健吾)

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