釜山市、日本人客回復へ本腰 前年比3割減、危機感

西日本新聞 国際面 前田 絵

 日韓関係の悪化のあおりを受け、韓国釜山市を訪れる日本人観光客数が落ち込んでいる。釜山市によると、昨年10月から2カ月連続で前年同月から3割減少。韓国全体より減り幅は大きい。釜山市や地元の観光関係者は日本人観光客を呼び戻そうと知恵を絞る。

 「コンベ(乾杯)!」。1月11日夜、釜山市の繁華街の西面(ソミョン)にある飲食店で約20人の日本人と韓国人が海鮮料理を囲んで杯を交わした。福岡市の韓国語教室などを通じて知り合った仲間で、新年会を兼ねて観光で釜山を訪れたという。日本人観光客の減少について尋ねると、韓国語講師の金智淑(キムジスク)さん(48)は「韓国での日本への抗議デモの様子が繰り返し報道され、日本人には『韓国は怖い』という印象が広がっている。わざわざ来ないと思う」。福岡市の主婦(56)も「『韓国に行って大丈夫?』という雰囲気はまだ続いている。旅行会社から届く韓国旅行の案内も減った」と話す。

 日本人観光客が多いアリラン通りで雑貨店を営む朴基玉(パクギオク)さん(65)は「年明け後も日本の常連客から『旅行を見合わせる』と連絡があった」と表情は暗い。

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 日韓関係が悪化した昨年7月以降、訪日韓国人が激減したのに比べ、訪韓日本人数は当初、大きく変動しなかった。韓国観光公社によると、7~9月はいずれも前年同月比で増加。釜山市によると、同市でも7月は前年同月比12・7%増で、8月こそ同5・0%減だったものの、9月には同0・4%増だった。

 だが10月、訪韓日本人数は減少に転じた。韓国全体では11月まで2カ月連続で前年同月比で10%余り減った。釜山市では10月に同29・5%減、11月には同31・7%減と急減した。釜山の減り幅の大きさが目立つ。

 要因の一つとみられるのが航空路線の運休や減便だ。航空路線は10月に冬ダイヤに切り替わるが、各社は7月以降の韓国人利用客の激減を受けて日本路線を大幅に減便。韓国空港公社によると、11月に金海国際空港(釜山市)と日本各地を結んだ旅客機は前年同月から半減した。

 10~11月は釜山国際映画祭や花火大会など集客力のある行事が集中する時期だっただけに、観光関係者は「本当にショックだ」。3月に切り替わる夏ダイヤでの増便に期待を寄せるが、先行きは不透明だ。

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 釜山市は日本人向け観光事業の強化に乗り出した。3月には同市郊外の観光地を日本語ガイドと一緒に貸し切りバスで巡る「ご当地シャトル」の定期運行を始める。市の日本語広報紙「ダイナミック釜山」も1月号からページ数を倍増した。市観光振興課は「個人旅行者の関心と再訪率を高めたい」と意気込む。

 釜山観光公社は釜山市や福岡市などで撮影され、昨年末に日本で放送されたテレビドラマ「孤独のグルメ」に着目。ドラマに登場したタコとホルモンとエビの鍋「ナッコプセ」を提供する店の情報などをインターネットで発信する準備を進める。ドラマ撮影に協力した飲食店「五六島(オリュクト)ナクチポックム」では「放送後、以前は来なかった日本人客が1日10組は来るようになった」とほくほく顔だ。

 業界団体の釜山市観光協会も11月に日本の旅行業者やメディア関係者を視察ツアーに招待。連携する福岡観光コンベンションビューローや長崎県観光連盟と意見交換を重ねる。

 12月の訪韓日本人数は前年同月を下回ったものの、減り幅は1・2%と縮小。福岡-釜山を結ぶJR九州高速船ビートルの年末年始(12月27日~1月5日)の利用客数も韓国人は前年同期比5割減と低迷したが、日本人は同9・3%増と復調の兆しも見える。

 同協会の担当者は「訪日韓国人数も今夏には回復するとみている。両国が協力して互いに観光客を受け入れる雰囲気をつくることが必要だ」と話した。

 (釜山・前田絵)

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