医師だけで改善できない現実も 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

連載:吃音~きつおん~リアル(13)

 前回、不登校から再び学校に通えるようになった男子高校生を紹介しました。ただ、「吃音(きつおん)外来」だけでは解決できない問題が多いのも現実です。

 高校1年の1学期から欠席が目立っていた別の男子生徒は、1カ月以上登校しなくなりました。両親が理由を尋ねてもはっきり答えません。「声がスムーズに出ないことに悩んでいるのか?」との質問に、ようやくうなずいたそうです。

 両親も吃音があることは分かっていましたが、「そのうち治る」と考え、どこにも相談していませんでした。慌てて私の外来を受診しました。本人は表情が硬く、質問にも一言ずつしか返事をしません。

 「友達もいない」「勉強についていけない」「クラスメートに外見を笑われる」…。こう訴えました。吃音のことを知らない人ばかりの高校で周囲に話し掛けることができず、友達ができなかったのでしょう。次第に孤立して勉強する意欲が失われ、いじめを受けるようになった様子も想像できました。

 私は、学校に吃音に配慮してもらえるよう、現状報告を兼ねた診断書を作成しました。両親も学校と話し合いましたが、本人は再び登校できないまま退学。家族のサポートで少人数の単位制高校に編入しました。

 文部科学省の調査では、2018年度に病気や経済的な理由などを除き、年間30日以上欠席した小中高校生は21万7251人。小学校は143人に1人、中学校は28人に1人、高校は63人に1人に上ります。不登校の要因はさまざまな指摘がありますが、私は授業中、休み時間など二つの場面で居心地の悪さを抱えると、学校に行きづらくなると考えています。

 教師が本人の困難さを理解していないことによる授業中の困り感は、吃音外来で支援すれば一定の改善が見られます。しかし、吃音をきっかけに人間関係、学力など問題が複雑化してしまうと、言語聴覚士スクールカウンセラーなど多職種の協力がなければ解決は難しくなります。だからこそ、吃音があることで居心地の悪さを感じている子どもに早く気付き、早く支援することが望ましいのです。 (九州大病院医師)

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