【2020円くまもとの旅】SNSで光、夕日の新名所 宇土半島へ自転車で

西日本新聞 夕刊 長田 健吾

◆お手頃に魅力を再発見

 2020年-。東京五輪への期待に日本経済が踊る中、お金や時間をかけなくてもアイデア次第で楽しめる熊本を再発見しようと、記者たちが思い思いにプランを練った。題して「2020円くまもとの旅」。熊本地震からの復旧工事が進み、春には平日の公開も予定される熊本城を見上げたら、昨年オープンした熊本市の新しいランドマーク「サクラマチ クマモト」を起点に出発だ。ぴったり2020円の旅費を握って。

 愛車のペダルをこぎ、サクラマチを出発して約1時間。進路を西に変え、宇土半島の南海岸線に入った。空は高く、走りは軽快だ。

 熊本県中西部、八代海に突き出た半島は、突端に世界文化遺産の「三角(みすみ)西港」があり、北海岸線沿いではJR三角線を観光列車の特急「A列車で行こう」が走る。南側は地味な印象があったが、ここ数年、宇城市不知火町の夕日スポットが会員制交流サイト(SNS)などでじわじわ話題になっていると知り、ロードバイクにまたがった。

 午前11時半前、道の駅不知火のレストラン「しらぬひ亭」で昼食。「1番人気」を信じて旅費の半分を投じ、千円の貝汁定食を注文した。数分で運ばれてきた貝汁は、すごい! 汁の中にアサリの小山ができるほどの具だくさん。一口含むと、磯が香る。貝を数えると48個も入っていた。

 店員の女性によると、道の駅が開業した1996年からの看板メニュー。お隣の宇土市で採れたアサリと、地元の合わせみそを使っている。休日などには1日100食を提供することもあるそうだ。

 道の駅を出た。目当ての夕日スポットはすぐ近くだが、いったん通り過ぎ、左手に海を感じながら約1時間半。三角線の終点・三角駅を過ぎ、上り坂を越えるとレトロな建物が並ぶ港が見えてきた。三角西港だ。

 2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界遺産に登録された。三池炭鉱(荒尾市、福岡県大牟田市)の積み出し港で、石組みの岸壁がきれいに残っている。

 白壁が特徴的な建物は、旧三角海運倉庫を改装したレストラン「西港明治館」だった。海を見渡すテラス席に心引かれたが、旅費節約のため、アイスコーヒーと焼きたてのメロンパンを買って外へ出た。海辺のベンチで味わった。

 港の周りに点在する旧三角簡易裁判所などの文化財を巡り、気づくと午後3時半を回っていた。冬の日没は早い。話題の「絶景」を見逃すまいと、折り返しの帰路に就く。沈みゆく太陽を背に浴びながら、自分の影を追いかけ、行きよりも重いペダルをこいだ。

 午後4時50分すぎ、道の駅近くまで戻り、永尾(えいお)の海岸に立った。海の中に、永尾神社の鳥居がぽつんと立っている。オレンジ色に染まる海辺には、カメラを手にした人影が4人、5人。

 宇城市まちづくり観光課によると、永尾神社の夕日は、数年前からSNSなどで拡散、国境を越えて知られるようになった。今では海外からの観光客もレンタカーなどを使って訪れるという。もともと半島北側の御輿来(おこしき)海岸周辺からの夕日が有名で、同課の坂本宏係長は「最近では三角西港を含めて夕日の名所3カ所を回る『三角(さんかく)ドライブ』も人気です」と話していた。

 午後5時を回り、いよいよ日が沈む。しんと静かな世界が色を増し、鳥居は黒い影となる。海面は夕日を反射してきらきらと輝き、光の道ができる。燃える夕日が島影と半島の向こうに消えていく。息をのみ、夢中でシャッターを切った。

 道の駅を再訪。ここには温泉がある。湯船には日に焼けた顔の地元のおじさんがいた。「宇城、いい所ですね」と声を掛けると、心なしかうれしそうだった。風呂上がりの一杯は、コーヒー牛乳。

 午後6時半。再び愛車に乗る。地図によれば、あと22キロ。残金は5円。道路脇の小さな神社のさい銭箱に全額を入れた。「2020年もいいご縁(5円)に恵まれますように」

 午後7時40分すぎ、サクラマチに帰ってきた。午前10時に出発して9時間40分、往復80キロの旅。体中が痛いが、荘厳な日没ショーに心を満たされた。日は沈むから、また昇る。「次はどこを走ろうか」 (長田健吾)

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