脱サラ、廃業の危機乗り越え 博多で人力車20年「天職」に

西日本新聞 ふくおか都市圏版 手嶋 秀剛

 博多町家ふるさと館(福岡市博多区冷泉町)を拠点に人力車業を営む神谷嘉三(かみたによしみつ)さん(60)が、起業から20年余りになる山あり谷ありの足跡をつづった著書「『好き飯』博多の人力車 裸一貫起業術」を出版した。

 神谷さんは神戸大卒業後、大手化粧品会社に13年勤めたが「自分の将来像が描けない」と1996年春に脱サラ。以前に京都・嵐山で見た観光人力車をヒントに同年7月、山笠期間中のふるさと館前で人力車業を始めた。だが、準備不足で乗客が集まらず、2週間ほどであえなく撤退した。

 その後はイベント現場での設営作業や居酒屋の店長をしながら、再起の機会をうかがった。99年6月、博多座開業に合わせ、スタッフを雇って人力車を引いた。好調だったのは最初の2カ月だけ。やがて売り上げゼロの日が続き、10月には開店休業状態に。廃業を避けたかった神谷さんは、灯油の配達、宅配便ドライバー、派遣営業社員をしながら二足のわらじで踏ん張った。

 転機は2005年。ホテルや神社と提携し、婚礼時に新郎新婦を乗せて走るプランが評判を呼んだ。年間の予約が100件ほどに達し「人力車一本で、生計のめどがたった」という。

 以来15年、九州各地の催しにもお呼びが掛かるようになり、博多の人力車はすっかり名物に。著書の題名の「好き飯」は「好きなことをして飯が食えること」と神谷さん。京都の人力車を見て「あんな仕事ができたら」と思った起業の原点をタイトルにした。

 「今の仕事は天職。幸せだと実感している」と話す神谷さん。今年は、令和ブームに沸く太宰府に人力車を走らせようと計画中だ。著書には、起業に必要な準備や注意点など後進への実践的なアドバイスも記している。175ページ、税別1500円。 (手嶋秀剛)

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