【ひと】第50回九州芸術祭文学賞で最優秀作に選ばれた 日巻寿夫さん

西日本新聞 総合面 藤原 賢吾

 肩書は主夫。大学職員の妻が家計を支え、家事や育児をしながら執筆し、3度目の挑戦で九州芸術祭文学賞最優秀作を射止めた。

 「僕でいいのか。今後の賞を盛り上げるためにも頑張りたい」。50回の節目の賞を背負う決意をこう語る。

 現在の福岡県みやま市で生まれ、九州大で文化人類学を学んだ。幼少期から映画が好きで就職活動をせずに上京。新聞配達をしながら専門学校に通いシナリオライターを目指した。コンクールに何度も応募したが落選が続く。2度目の就職で転居した宮崎で地元の文学賞を狙い小説を書き始め、数年前、妻との結婚を機に職を辞して福岡県大野城市に移住した。

 「家族は共同戦線を張っているので、家計が成り立てばどんな形でも構いません」

 受賞作は冒頭シーンがまず浮かんだ。実家で暮らす無職の「私」の30歳の誕生日。ケーキの代わりに用意されたのは、ろうそくが1本立てられたシュークリーム。明らかに両親から歓迎されていない「私」とは何者なのか。

 「バブル期を知らず(停滞した)今の空気を吸って育ち、世界に対して接続不良で親にも丁寧な口調で話す」。そんな人物像を膨らませた。随所にユーモアもちりばめ、「私」が抱える社会への違和感が物語を牽引(けんいん)していく。

 一人娘は1歳9カ月。ベビーカーを押して買い物に出ると「お父さん偉いわね」と声が掛かる。子育てへの固定観念。そんな目に違和感を唱えるのではなく、声を掛けられた時の皮膚感覚を創作に生かしたい。「昨晩は夜泣きがひどくて」。眠そうな目を細め、36歳は未来を見据えた。 (藤原賢吾)

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