遺体や傷の写真、裁判員の精神的負担に? 「刺激証拠」識者の見解は

西日本新聞 社会面 鶴 善行

 市民が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度は導入から10年が過ぎ、課題も浮き彫りになってきた。「分かりやすい法廷」は定着しつつある中、遺体や傷の写真など裁判員の精神的な負担につながる証拠の扱いを巡っては裁判所と検察庁で意見の相違もある。福岡地裁の平田豊所長(61)と福岡地検の松井洋次席検事(52)に制度の現状や「刺激証拠」への見解を聞いた。 (鶴善行)

■真相究明に不可欠な時も 松井洋・福岡地検次席検事

 裁判員制度の成果として感じていることは、何よりも裁判が分かりやすくなった点だ。裁判所が実施している裁判員経験者へのアンケート結果でも分かるように、多くの人が前向きに受け止めている。刑事裁判に対する国民の理解や支持を示すものだろう。

 制度開始に当たり、検察庁でも分かりやすい主張、立証について検討を重ねた。冒頭陳述と論告は一覧性や文字の大きさ、どのような色合いが良いかも研究した。現在も新任検事らは研修を通して裁判員裁判での証人尋問や主張、立証の手法を身につけている。

 制度の適切な運用のため、刺激証拠に関する配慮は必要だ。ただ、個別の事件では刺激証拠を取り調べる必要性や裁判員に与える負担を巡り、裁判所と検察庁の認識は必ずしも合致していないと考えている。

 検察は公判を維持できるかどうかを考え、起訴の判断をする。起訴時のオリジナルの証拠が「刺激証拠だ」という理由で採用されなければ、刑事訴訟法が掲げる真相究明や適正処罰、ひいては刑事裁判の在り方として違和感を抱かざるを得ない場合もある。

 例えば傷害致死事件で、攻撃の回数や程度が問題になったとする。犯行の場面を写した防犯カメラ映像や、目撃者がスマートフォンで撮影した動画があれば一目瞭然だろう。しかし裁判所は、人が人を殴ったり刺したりする映像は「極めて刺激性が高い」と判断することが多い。

 動画などの代わりに「強く殴っていた」「10回殴っていた」と述べる目撃者の供述調書が証拠採用された場合、臨場感や攻撃の強さを十分に代替できるのか疑問だ。動画の取り調べを切望する被害者や遺族の司法に対する信頼を失うのではないかとも懸念する。

 検察庁としても、裁判員の体調や精神的負担には当然配慮する。過度に裁判員への配慮に偏り、刑事裁判が事件の真相に迫れなければ、司法に対する国民の信頼の向上という法の趣旨に逆行する。正確な事実認定などに不可欠な場合は、今後も証拠採用の必要性を明確に主張していきたい。

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