遺体や傷の写真、裁判員の精神的負担に? 「刺激証拠」識者の見解は (2ページ目)

西日本新聞 社会面 鶴 善行

■本当に必要なのか吟味を 平田豊・福岡地裁所長

 裁判員法は司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上を目的としている。傍聴人も含めた国民に分かりやすい裁判にするという意識は法曹三者で共有しており、制度開始からの10年で刑事司法への理解は高まったと考えている。

 従来の裁判は調書中心で、裁判官が自宅で調書を読み込み判決文を書くことが多かった。現在は証人尋問など法廷での証拠調べを通して判決するという審理が進んでいる。裁判員が法廷で「見て聞いて分かる」裁判をするという意識は非常に強まっている。

 裁判員候補者の辞退率は現在60%超(2018年は67%)ある。無理に務めなければならない制度ではなく、一定の辞退率があることは健全だと思っている。しかし辞退率が上がっている理由は何なのか調べる必要はあるだろう。是正できるものは是正するべきだ。

 刺激証拠について言うと、まず刑事裁判というのは被告が有罪か無罪かを見るのが第1。有罪であればどの程度の量刑にするのかが第2。これらを決めるに当たって、必要最小限の証拠を押さえて行うものだ。

 裁判は適正に迅速に審理することが重要で、刺激証拠が本当に必要なのか吟味しなければならない。必要であれば裁判員への配慮と工夫をし、負担をかけない形で扱うことは法曹三者で協力している。

 被告が捜査段階から黙秘している事件では、裁判で動機などを細部まで明らかにすることはそもそも困難だ。必要な証拠を排除しているわけではなく、法の趣旨に反しているとの批判は当たらない。

 遺体の写真を見て急性ストレス障害になったとして、裁判員経験者が13年に国を提訴した。この件が裁判員裁判における刺激証拠の取り扱いを変える発端になったのは間違いない。制度開始当初にそういう観点が欠けていたという面は反省する材料だ。

 他にも、評議を自由に行うために設けられた守秘義務が経験者の負担だという声も多い。裁判所としては、今後も裁判員が話せる範囲を丁寧に説明していきたいと考えている。

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