「えびラー」伝統と変革 えびつラーメンセンター 【食堂物語】

西日本新聞 北九州版 金田 達依

 「218番のお客さま、お待たせいたしました」。昨年12月上旬の土曜日の昼時、約15人の客が並ぶ店内では、注文した料理完成を知らせる音声とともに、電光掲示板の番号が点灯した。

 昨年3月に建て替えられた福岡県岡垣町の「えびつラーメンセンター」は、大衆食堂ではあまり見られない機械化とシステム化を積極的に導入した。電子マネー対応の食券販売機を置き、ご飯つぎや麺類の湯切りは機械が担う。時間ごとの顧客や人気メニューの注文などは数値化され、配置する従業員の人数はデータに基づき決める。

 「お客さまに愛されている伝統の味を守るのが一番大切。それ以外は生き残るため、時代に合わせて変化しています」。同センターを経営する都商事(岡垣町)の都留正泰社長(51)は胸を張る。

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 同センターは、運送会社「丸都運輸」(同町)の都留正一会長(故人)が、約50年前に創業した。当時、店舗は国道3号沿いにあり、筑豊地区をはじめ遠くから客が集まった。24時間営業のため、北九州地区の工業地帯で3交代勤務を終えた労働者らも多く、約20年前までは岡垣町内を中心に4店舗を展開していたという。

 「えびラー」の愛称が定着した現在も航空自衛隊芦屋基地(芦屋町)やトヨタ自動車九州(宮若市)の勤務者らが訪れる。土日はひっきりなしに客が来店、午前0時以降も満席になる盛況ぶりだ。元々は男性の労働者が多かったが、建て替え以降、土日は家族連れや若い女性も増えたという。

 妻、娘と来店した北九州市小倉南区の会社員畑中康弘さん(51)は「若い頃夜遊びした帰りにも食べた青春の味。約30年来ているが変わらずおいしい。この子にも覚えてほしい」と笑顔で話す。

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 長く愛される理由は、都留会長のこだわりがつくり上げた味。敷地内に製麺所を併設し、麺に加えてギョーザも毎日皮から作る。焼き肉定食には黒毛和牛を使い、調味料も近隣の産品を用いる。定食に付くのは貝汁。石焼きビビンバ開発のため、韓国で現地の味を研究した逸話が残る会長は、2016年に84歳で亡くなるまで毎日店舗を訪れていたという。

 従業員を大切にするのも伝統だという。会社負担の慰安旅行を毎年開催し、長期入院にも応じるなど勤務シフトは柔軟に対応。その結果、従業員の定着率が高く、人繰りが難しいとされる24時間営業を維持する基礎となっている。30年近く働く松本香織主任(57)は「子どもが体調を崩した時も勤務の融通が利き、仕事は楽しいのでここまで続けてこられた」と話す。

 古き良き昭和の味と人を大切にする経営を維持しつつも、必要に応じて変化する「えびつラーメンセンター」。これからも世代を超え愛されていくはずだ。

▼えびつラーメンセンター 24時間営業。不定休だが、月1回は機材メンテナンスなどのために閉店する。駐車場は約50台分で、3台はトラックに対応。全75席が満席となると、空きが出るまで食券購入ができなくなる。岡垣町鍋田1-1-22。093(283)1008。

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