通夜も告別式もない「直葬」増加の背景 大手業者も参入

西日本新聞 長崎・佐世保版

「都市部で1割」大手業者も参入

 人生の最期に別れを告げるお葬式で、通夜も告別式も行わない「直葬」と呼ばれるスタイルを選択する人が増えている。精霊流しなどの葬送儀礼を大事にする意識が強い長崎県内でも「ここ数年で急に多くなった」(県内の葬祭業者)とみられ、冠婚葬祭業の大手グループも直葬に乗り出した。背景に何があるのか。

 ビルの1階に、「101」から「105」までのプレートをドアに掲げた部屋が廊下を挟んで並んでいる。1室の広さは18畳ほどだろうか。部屋には位い牌はいなどを置く小さな祭壇が設けられている。直葬専用の遺体安置室だ。

 諫早市中心部の商店街近くにある葬祭場。冠婚葬祭業大手「メモリード」(総合本部・長与町)グループの葬儀社「アイエム」が2018年7月に開業した。この葬祭場で扱う直葬は月に数件だが「問い合わせや見学は多く、今後は確実に増える」(同社)。安置室のひとつは、夏でも遺体を預かれるよう棺ごと収納できる保冷庫を備えている。

 直葬は「火葬式」とも呼ばれる。遺体は墓地埋葬法で死後24時間以内の火葬が禁じられているため、いったん葬祭場に安置された後、翌日に火葬場に搬送されて近親者が見送るのが一般的だ。通夜や告別式は行わず、戒名やお布施などの仏事もないため「費用は一般葬の10分の1程度」(同社)という。

 直葬の件数を示すデータはないが、県葬祭業協同組合の為永伸夫理事長は「県内でも2、3年前から急に増えた。今は都市部で行われる葬儀の1割くらいを占めるのでは」と推測。告別式がある一般葬の場合、火葬は正午以降に集中するが、長崎市の火葬場では18年に受け付けた5782件のうち13・2%を午前9~10時に行っており「その多くは直葬だったのでは」(同市)とみられる。

背景に意識の変化、生活困窮…

 「多死社会」が訪れている。団塊の世代が人生の最期を迎えることもあり、厚生労働省の推計によると19年に137万人の年間死亡者数は40年には168万人にまで増加する見通し。首都圏などでは火葬場の不足なども問題化している。

 そうした中で県内でも増えているとみられる直葬。家族や地域社会のつながりの希薄化とともに、背景のひとつとして考えられるのが、十分な葬儀費用を用意できない生活困窮者の増加だ。

 今月半ば、長崎市で営まれた直葬。亡くなった80代の男性は妻とともに月十数万円の年金でグループホームに入所し、蓄えがなかった。遠方から駆けつけた2人の息子も就職氷河期世代で生活に余裕がなく、直葬を選択した。

 年間80件近くの直葬を請け負う「つばき会館長崎南斎場」(長崎市)代表で終活カウンセラーの御手洗千世さんは「身寄りがなかったり、老々介護で貯蓄を取り崩したり…。きちんと弔いたくてもできない人が増えている」と話す。

 近年は格安の葬儀プランを紹介するインターネット系葬儀社も増え、こうしたサイトを検索して直葬を知る遺族も多い。つばき会館も直葬の半数は、ネット系の“下請け”だ。

 一方、直葬を選んだ遺族が事情を知らない親族などから批判されるケースもある。御手洗さんは言う。

 「その時点で精いっぱいの弔いをしたと周囲は理解してほしい。金銭的な余裕ができてから故人と親しかった人が集まってしのぶ会を開くなど、葬儀の在り方も柔軟に考えていいのでは」

 (山本敦文)

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