元組長の証言映像再生 元組合長射殺事件 【工藤会トップ裁判】

西日本新聞 社会面

〈マンスリー報告 1月〉弁護側、資料の不備追及

 特定危険指定暴力団工藤会が関与したとされる市民襲撃4事件で、殺人などの罪に問われた会トップで総裁の野村悟被告(73)とナンバー2の会長田上不美夫被告(63)の1月の公判は、元漁協組合長射殺事件(1998年)に関する証人尋問が続いた。検察側は同会系元組長の証言映像と音声を再生し、野村被告の関与を立証しようとした。警察、検察関係者は押収した弾丸の鑑定経緯などを説明。一方、弁護側は検察官調書と証言の矛盾や、鑑定に関する資料作成の不備を追及した。

「オヤジの用事」

 ≪1月16~22日に4回の公判があり、検察側証人が14人出廷した。事件直前に実行犯=無期懲役が確定=と喫茶店に立ち寄った元組長は、実行犯の言葉を別の組幹部の公判(2017年)で証言していた。「オヤジ(野村被告)の用事を済ませてくる」-≫

 元組長 実行犯は野村被告を「オヤジ」と呼び、尊敬し、忠誠心も厚い。野村被告の名前が入った背広をもらって喜んでいたし、胸には野村被告の名前を入れ墨で彫っていた。「オヤジのためなら命を捨てられる」と真面目に話していた。

 事件当日の夜、2人で事件現場近くの喫茶店に行った。実行犯は午後7時ごろ、「オヤジの用事を済ませてくる」と店を出て行った。事件直後の同8時半~9時ごろ、(元組長の)組事務所に来て「被害者が殺されて困った。仕事が無くなった」と言った。事件と関係ないことを印象づけようとしていたと思う。

 弁護側 02年の検察官調書では「用事を済ませてくる」という言葉で説明している。「オヤジの」という言葉はなかった。

鑑定の流れ確認

 ≪事件現場や被害者の体内から計5個の弾丸を押収。福岡県警科学捜査研究所(科捜研)で鑑定し、一部は警察庁科学警察研究所(科警研)に送った≫

 県警の元特別捜査班長(1) 事件発生時から捜査の指揮に当たった。現場に落ちていた弾丸1個と、被害者の体内から摘出した4個を押収し、科捜研に鑑定嘱託した。実行犯が起訴され、証拠として福岡地検小倉支部に送った。

 弁護側 証拠に関する文書に証人自身が署名、押印をしていない。目を通していなかったのか。

 元特捜班長(1) 捜査本部の立ち上げで混乱していた。文書は見ていないが、部下から口頭で報告を受けていた。

 元科捜研科長 事件発生時、現場に行った。血の中に弾丸が1個あり、強烈な印象が残っている。被害者の体内から採取した4個と合わせ計5個を鑑定した。うち2個は、他の犯罪との関連性を調べるため科警研に送った。証拠品の管理のために必要な書類は間違いなく作成した。弾丸は傷つけないよう注意した。

 元科警研室長 事件当時、銃器弾丸類を鑑定する研究室の室長だった。科捜研から鑑定嘱託があった弾丸2個について他の犯罪との関連性を調べた。定められた方法で鑑定した後は保管していた。02年7月ごろ、要求に基づいて科捜研に返送した。

 元埼玉県警警察官 1996年4月~98年3月、科警研の鑑定係長だった。鑑定嘱託の受け付けなどの事務手続きを担当。科捜研から弾丸の鑑定依頼も受けた。

 弁護側 科警研では鑑定資料の取り扱いについて定められた様式を使うよう規定されているが、当時は使われていない。

 元埼玉県警警察官 規定に基づいて職務はしていたが、銃器弾丸類の鑑定数が多く、運用としては別の書類による管理で対応していた。規定に反する運用という認識はない。

重要証拠手中に

 ≪福岡県警は2003年、実行犯の知人女性が住んでいた家を検証し、事件前日に実行犯の拳銃が暴発したとされる弾丸1個を発見。事件現場で見つかった弾丸の発射痕と一致し、実行犯の関与を裏付ける証拠と判明した≫

 元特捜班長(2) 班長(1)の後任。03年6月、実行犯の知人女性が住んでいた家を捜索した。玄関左の壁の内側から弾丸1個が見つかり、本当に驚いた。小倉支部から借りた弾丸5個と一緒に鑑定に出し、事件で使われた弾丸の発射痕と一致した。殺人の重要な証拠になるので、小倉北署の証拠品係に保管した。

 弁護側 小倉支部から弾丸5個を借りたときの借用書はあるのに、返したときの受領証はないのか。

 元特捜班長(2) 記憶が欠落している。

 班長(2)の部下だった警察官 実行犯の知人女性が住んでいた家の捜索を行い、図面作製の補助役として携わった。弾丸が見つかった翌日の03年6月26日、班長の指示で女性方の弾丸1個と小倉支部から借りた弾丸5個を科捜研に持ち込んだ。

 弁護側 捜索の際、現場の検証も行われているが、検証調書にあなたの名前はない。(捜索に)参加したのか。

 警察官 (自分の名前がなぜ記載されていないのか)分からない。

規定の書類なく

 ≪17年夏、証拠品の精査も進み、弾丸6個もあらためて鑑定した。弁護側は、規定に沿った書類を作成しなかった検察事務官の不備を問題視した≫

 地検の検察事務官(1) 検事の指示を受けて科警研に弾丸6個の鑑定を依頼することになり、17年8月、小倉支部から借りた。借用書も作成した。

 地検の検察事務官(2) 小倉支部に在籍していた17年に弾丸6個を地検に貸し出した。目的は科警研での鑑定と聞いていた。外部に貸し出す際に書類を作成する規定はあるが、作成しなかった。地検からの借用書があり、代用できると判断した。

 弁護側 規定には借用書で代用できると記されているのか。

 地検の検察事務官(2) (記載は)ありません。

 弁護側 (代用できると)あなたは判断する立場にあるのか。

 地検の検察事務官(2) 分かりません。

 地検の検察事務官(3) 弾丸6個の鑑定嘱託の準備を担当。17年9月に科警研を直接訪ね、弾丸を持ち込んだ。鑑定終了後も直接、取りに行った。 (工藤会トップ裁判取材班)

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【ワードBOX】元漁協組合長射殺事件

 1998年2月18日夜、北九州市小倉北区の路上で、同市若松区の元脇之浦漁協組合長=当時(70)=が頭や胸を撃たれ死亡した。福岡県警は2002年、殺人容疑などで田上不美夫被告ら4人を逮捕、田上被告のみ不起訴となった。裁判では実行犯ら組幹部2人の実刑判決と、組幹部1人の無罪が確定。県警は14年9月、事件に関与した疑いが強まったとして、同容疑で野村悟被告と田上被告を逮捕した。

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