聞き書き「一歩も退かんど」(72)懐柔の電話はねつけ 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面

 2007年12月4日、鹿児島地検の一室。私はがくぜんとしながら、福岡高検の室井和弘刑事部長の言葉を聞いていました。

 「川畑さん、あなたの言っていることは全部うそ。法廷で証言するなら偽証罪で逮捕するよ」。踏み字事件の被害者の私に対し、何という言い草でしょう。

 室井部長は続けて、「報道関係は、今度は『川畑はうそつきだ』と書くよ」。「あなたの家に(任意同行に)来たのはHじゃない。私はだまされないよ」

 さらに私が法廷でH元警部補に「人の親なら正直に語らんか」と言い放ったことを挙げ、「この言葉を今度はHの弁護士があなたに突きつけるよ。Hも組織を辞めて裸になったからガンガンあなたを攻めてくる」。

 もうたくさん! こんな検事を信じた私がばかでした。制止を振り切って地検を飛び出しました。家に帰って妻の順子に「おいが甘かった。(踏み字をされた)Hの取り調べと変わらなかった」と告げると、「逮捕なんて、できっこないから」と慰めてくれました。

 このことを野平康博弁護士に報告すると、「信じられない。検事による偽証の教唆に当たる可能性さえある」と憤慨。告発状を作り記者会見することになりました。私が被害者として福岡地裁で証人尋問に立つのは12月27日なので、「会見の時期はよく見極めよう」とのことでした。

 数日後、野平先生から会見の日取りについて連絡が。「証言前日の26日、それも午後の遅い時間に鹿児島でやりましょう」。高検に裏工作に動く時間を与えない狙いでした。

 そして26日の朝、室井部長から自宅に電話が。それまでも高検から連絡を促すファクスが来ていましたが無視していたのです。妻が時間稼ぎをして、テープレコーダーのボタンを押して渡してくれました。

 室井部長は「これじゃ明日(の証人尋問)はぶっつけ本番になりますよ」と懐柔し、証言のすり合わせを求めてきました。そして「あなたもマスコミにいろいろ言っているようだけど、打ち合わせのことはこちらも記録しているからね。あんまりいいかげんなことは言わない方がいいですよ」。

 この一言に私はかちんと来ました。「いいかげんなことなんて言ってません」。「すり合わせ」の誘いをはねつけました。

 こうなると高検に対しても「一歩も退(ひ)かんど」ですね。告発会見で反撃です。 (聞き手 鶴丸哲雄)

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