海平さんと波平さんがパレード ほほ笑ましいイメージ生かした商店街

西日本新聞 九州+

連載:「サザエさんの町」物語(3)

 「この辺りは『サザエさん通り』と名付けられているんですか。うちも、こんな名前がほしいですね」。2011年10月、東京・世田谷区の長谷川町子美術館を初めて訪ねた福岡市早良区の西新商店街連合会の鳥巣勲会長(68)の口から素直な気持ちが漏れ出した。雑談での言葉だったが、川口淳二館長(74)の心にしっかりと残った。

 鳥巣さんは当時、産学官でつくる「福岡西部Eまちづくり協議会」会長を務めていた。協議会がサザエさん発案の地を「地域の宝」として生かす方針を打ち出し、美術館との協力関係を深めようと出向いたのだ。

 美術館への道筋にある桜新町商店街を歩いていると、キャラクターとともに「サザエさん通り」と書かれたバナーが、鳥巣さんの目に留まった。「通りに愛称が付くと、みんなが愛着を抱いてくれる」

 協議会が活性化を目指したのは、長谷川さんがサザエさんのアイデアを練った百道(ももち)海岸を埋め立てて新しく生まれたシーサイドももち地区や長谷川さんが暮らした西新地区を含む福岡都心西側の地域。住宅地や福岡タワー、IT企業が集積するシーサイドももち地区と、商業地として発展を遂げた西新地区の一体化を図るのが課題の一つだった。

 「新しくできた街の人たちが地域を楽しみながら歩き、商店街にも足を延ばしてもらう方法を話し合っていた。サザエさんが生まれた地をアピールできる通りは、ぴったりだった」

 願いは驚くほどスムーズにかなった。美術館は、長谷川さんの足跡を残し、もり立てようとする地域の熱い思いを理解していたからだ。12年2月、通り名の使用を内諾した。

 鳥巣さんは、地元の校区自治協議会長らと連名で市道に愛称を付けるよう早良区長に要望書を出し、ルートが検討された。同年5月には「サザエさん発案の地」の記念碑を中間点に、シーサイドももち地区の海浜公園と商店街そばまでを結ぶ1・6キロが、全国2カ所目の「サザエさん通り」と命名された。

 記念式典で桜新町商店街の役員2人と並ぶ川口館長を見て、鳥巣さんはあるメッセージを感じ取った。「町子先生とゆかりのある商店街同士、サザエさんのほほ笑ましいイメージを生かしていってほしい」

 美術館はこの年、西新地区の商店街がサザエさんと波平さんの双子の兄、海平さんの着ぐるみを制作するのを了解しその後、波平さんの着ぐるみも加わった。17年1月には西新地区の5商店街を貫く通りに「サザエさん商店街通り」の名前が付くことも実現し、着ぐるみが主役のパレードを行う祭りが秋に開かれるようになった。

 サザエさんが買い物に出かけた町のように、かつて個人商店が並んでいた西新地区。近年は、深夜営業の飲食店や小売チェーン店が目立つようになってきた。「サザエさんの明るい雰囲気を大切にした商店街であり続けたい」と鳥巣さん。「サザエさんの町」づくりの歩みは続く。

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