【2020円くまもとの旅】昭和を感じる長屋へ 河原町繊維問屋街

西日本新聞 夕刊 綾部 庸介

 熊本に着任して2年目。刺激を求めて、熊本市街地の新たな顔「サクラマチ クマモト」からぶらぶら歩く。下通アーケードを抜けて数分。10階建てマンションの裏に、昭和を感じさせる長屋を見つけた。「河原町繊維問屋街」だ。

 幅2メートルほどの路地に面した店舗の多くはシャッターが閉まり、看板もボロボロ。廃虚と思いきや、手入れの行き届いた植物もある。ドキドキしながら路地を進むと、雑貨店を発見。見たことのないアニメキャラクターの人形がそろってこちらを見つめている。

 この店は、画家中村佳子さん(44)が2012年から営む「モラトリアム」。商品はどれも、未使用品も含め一度役目を終えたもの。秘密の仕入れ先から集めたという戦前の封筒や人形、雑誌など約1万点が所狭しと並ぶ。

 店名には、新たな持ち主が見つかるまでの「猶予期間」という思いを込めた。「一度捨てられた物でも、必要としている人がいるんです」。その言葉にひかれ、2020円を全額投入することにした。

 目を引いたのは、33色の色鉛筆2千円。ケースには愛読するボクシング漫画「あしたのジョー」が描かれている。残り20円。頭を抱えていると、中村さんが同じ漫画のカードを3枚見せてくれた。

 いい、これはいい。しかし、中村さんの私物だと聞き、ためらっていると「欲しい人が持っていた方が良いんです」と背中を押してくれた。色鉛筆と合わせて2020円。

 商品は中村さんの愛着あるものばかり。売れた時、寂しくないですか? 「旅立つことは喜ばしいことですから」と中村さんは笑った。

 戦後、繊維卸問屋の街として栄えたこの地区には、1955年ごろに約120世帯が生活しながら商売を営んでいたが、58年3月の大火事でほとんどの店が焼失。半年後、住民らの共同出資でコンクリート造りの長屋として再建された。たたずまいはほぼ当時のまま、現在はアトリエや洋服店など約20店舗がある。

 味のある建物を一目見ようと、県外から訪れる人も多い。同問屋街組合長で設計事務所を営む長野聖二さん(48)は「もう、こんな街はできないでしょうね」と話す。

 約60年前の姿を残す問屋街を出て、考えた。いつかサクラマチも、古き良き熊本の一つになるのだろうか-。 (綾部庸介)

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