英国なきEU 原点に返り統合維持せよ

西日本新聞 オピニオン面

 英国が欧州連合(EU)から離れ、別の道を歩み始める。第2次大戦後、6カ国の経済共同体から始まり28カ国に拡大したEUにとって初めて経験する加盟国の離脱である。

 平和と民主主義を理念にした史上例のない「壮大な実験」と呼ばれる欧州統合は後退してしまうのか。国連安全保障理事会常任理事国で経済力もある英国の離脱は、国際社会でのEUの存在感も揺るがしかねない。歴史的な事件である。

 日本にとっても、自由と民主主義、人権や法の支配といった価値観を共有するEUは重要なパートナーだ。米国が自国第一主義に陥り、ロシアや中国が強権的な拡張路線を取る中、日本とEUの連携は価値を増している。EUには今後も基本的な路線の継続を求めたい。

 欧州は20世紀に2度の大戦を経験し荒廃した。その反省から不戦を誓い、まず経済分野から統合を目指した。そこから発展して東西冷戦終結後の1993年に発足したのがEUである。

 域内で人、モノ、資本の移動の自由を原則とした単一市場を創出し、単一通貨ユーロも導入した。世界の国内総生産(GDP)の2割を超える巨大市場は国際的なルール作りにも貢献してきた。国境の概念を大幅に変え「EU市民」という意識も定着させたかに見えた。

 英国は単一市場や関税同盟に入る一方、通貨ポンドを維持するなどEU内でも特別な立ち位置だった。それでも離脱を選択した背景には、移民問題の存在が大きい。特に所得水準の低い東欧諸国から大量に流入し、英国内の労働者層に不満が高まった。こうした移民、難民への反発はEU加盟国内にも広がっており、英国の離脱後、まず直面する難問だろう。

 英国とEUは2月から激変緩和のための移行期間に入る。英国は暫定的にEUのルール内にとどまり、年末までに貿易協定などを結ぶことを目指す。英国にとってはルールに従うだけで意思決定に加われない中途半端な状態であり、政府は移行期間の延長には否定的だ。

 英国はEUと並行して日本や米国とも貿易協定の交渉を進める意向で、複雑な対EU交渉全てを年内に妥結するのは困難との見方が大勢だ。英政府は柔軟な対応を取り、拙速な交渉で混乱を招かぬようにしてほしい。

 EUにとってもドイツに次ぐ経済規模の英国が抜けるのは打撃だ。加盟国の予算分担金を巡り、英国の穴をいかに埋めるかで意見が割れ始めた。国際社会での発言力低下や共同体自体の弱体化も懸念される。原点に立ち返り「一つの欧州」の理想を後戻りさせてはなるまい。

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