一家の像再建に全国から協力 「愛される存在を実感」

西日本新聞 九州+ 下村 佳史

連載:「サザエさんの町」物語(5)

 「サザエさんがいなくなった。タラちゃんが寂しがっている」-。福岡市早良区のシーサイドももち海浜公園入り口に設けられたサザエさん一家のシルエット像4体のうち、サザエさん像が足元から折られ倒される事件が2015年7月に起きた。

 「サザエさん通り」の愛称が付けられた道の終点に、市が設置した像だ。再建を担ったのは地域住民や企業、学校でつくる「『サザエさん通り』を生かしたまちづくり推進協議会」だった。

 「みんなの善意で建て直そう。多くの人がかかわって像を見守っていくと、こんな事件は二度と起きない」。本来なら市が費用を賄うところだが、協議会に参加する「サザエさんの会」の吉武勝美会長(66)らから、こうした声が上がり、募金を呼び掛けた。

 全国の人たちから協力してもらおうと、口座振り込みのほか、当時、ようやく認知されてきたインターネット上で資金を募るクラウドファンディングも行った。目標額は制作・設置費の一部の20万円だったが、200件余りの募金があり、約144万円が集まった。

 再建した像のお披露目について話し合う会合が翌年2月に開かれた。冒頭、思いもよらぬ残念な報告があった。この日の朝、サザエさんの帰りを待っていたタラちゃん像が足元から折られて見つかった。ワカメちゃんの像も傾いていた。

 「今度は区から費用を出しましょう」。区役所から申し出があったが、協議会は「地域の宝」との思いを浸透させる願いを込め、タラちゃん像再建の募金も始めた。被害を免れたカツオくんと、ワカメちゃんの像とともに親子の像が披露されたのはその3カ月後。

 「全国から寄付が集まりサザエさんがいかに愛されているか実感しました」。約100人の市民が集まったお披露目で協議会の大杉晋介会長(62)はこうあいさつした。

 1月30日、漫画「サザエさん」の作者、長谷川町子さんの生誕100年を迎えた。協議会は、記念事業について昨年、話し合った。「形として、いつまでも残るものにしよう」。銅像づくりに取り組むことになったとき、大杉さんはシルエット像再建の記憶をよみがえらせていた。

 「寄付を広く募る同じやり方で、市民一人一人に関心を持ってもらおう」。年内にサザエさんとカツオくん、ワカメちゃんの3体を「発案の地」の磯野広場に据えようと募金活動を続けている。

 「みんなと一緒に、サザエさんの町をつくっているんです」と大杉さん。サザエさんの名前が付いた通りは、気持ちよさそうに散歩する家族連れの姿がある。サザエさんを通して幅広い世代が地域を見つめ、誇りや愛着を育むまちづくりは全国のモデルとなるかもしれない。長谷川さんが「サザエさんの町」に残した足跡は、そこに暮らす人たちを生き生きとさせている。 =おわり

 (下村佳史が担当しました)

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