仏像守った先人を思い高さ3メートルの傑作 百済観音像を模刻の京仏師

西日本新聞 ふくおか都市圏版 下村 佳史

 東長寺(福岡市博多区)の福岡大仏を制作した京仏師、高井〓玄(そうげん)さん(71)が元気にのみを振るっていると聞き、福岡市早良区内野にある工房「一乗院仏像彫刻所」を訪ねた。そこで目にしたのは、法隆寺(奈良県)にある長身の百済観音像の図。これから原寸大に模刻し、門下生たちと今年11月に開く仏像彫刻展に出品するというのだ。

 日本の仏教美術を代表する、飛鳥時代の傑作とされる百済観音像。台座に直立する像は光明を表した背後の光背を含めると、3メートルほどの高さになる。慈悲にあふれるほほ笑みを浮かべるこの像を彫ろうと思い立ったのは私淑する彫刻家、新納(にいろ)忠之介の生き方に迫るためだった。

 新納は鹿児島市出身で、明治から戦後復興期にかけ奈良や京都など各地で国宝や重要文化財の神仏像などを修復し、日本の文化財保存の基礎を築いた彫刻家とされる。新納は、古い時代の仏像の模刻も手がけ、原寸大の百済観音像2体も造っている。

 廃仏毀釈(きしゃく)によって破壊された仏像などを、使命感を持って修復した新納。その姿を追い求める高井さんは「仏像を後世に残していこうと、ひたすら修理に打ち込まれた。尊敬の念でいっぱいです」

 光背までの高さが16・1メートルと木造座像仏としては日本一の福岡大仏や、安国寺(中央区)の高さ4・5メートルの仁王像を手がけ、大きな足跡を残してきた高井さん。「体力を思うと、これが最後の大作になるかもしれない」。工房で使うのみと彫刻刀はそれぞれ500本ずつ。紙やすりは使用せず、彫刻刀で繊細に削りながら表情を際立たせていく気の遠くなるような作業が待っている。

 用意した図面は、正面と後ろ姿、左右の側面の4枚。伸びやかな体形を覆う天衣には、波打つようにいくつものひだをつくっている。「ひだがどのように流れ、つながっているのか、見極めが難しいところもある」。模刻ゆえに苦労する点もある。

 生まれも、修業の地も京都市。「九州で大作の依頼を引き受けていこう」と、福岡に工房を構えて35年になる。仏像彫刻に親しむ人を増やすことにも力を入れ、これまで教えてきた門下生は延べ千人余り。現在も工房と中央区天神の市内2カ所で教室を開き、九州にすっかりと根を張った。

 間もなくのみを入れ始める。「だれもが知る優美な百済観音像が地元で造られることを広く知ってもらい、仏像彫刻への関心を高めたい」 (下村佳史)

※〓は「王ヘン」に「宗」

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