熊本県小国町北里。涌蓋(わいた)山麓の緑豊かな里が…

西日本新聞 オピニオン面

 熊本県小国町北里。涌蓋(わいた)山麓の緑豊かな里が、世界的細菌学者の北里柴三郎の故郷である。昨年、新紙幣の千円札に肖像の採用が決まり喜びに沸いた

▼新紙幣で北里と入れ替わるように、1万円札の「顔」から福沢諭吉(中津藩出身)が退くことに因縁を感じる。九州出身という単純な理由ではない。欧州から帰国後、活躍の場を失った北里に手を差し伸べたのが福沢だった

▼コレラ、腸チフス、赤痢…。明治日本は感染症対策が喫緊の課題だった。北里は福沢に「もはや伝染病の制圧は一国の問題ではない」と欧州に伍(ご)する研究体制の確立を訴える。福沢は呼応し、1892年、北里を所長に日本初の伝染病研究所を開設させた

▼それから128年。感染症の脅威はやまない。中国・武漢で発生した新型肺炎の感染者数が、2002~03年に中国を中心に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を超えた。日本人の感染も確認され、流行の終息は見通せない

▼SARSでは情報が隠されたまま春節を迎え、大流行につながった。その教訓を中国政府が生かし切れたか疑問だ

▼ただ新型肺炎は北里の言葉通り「一国の問題ではない」。大分市はいち早く友好都市・武漢にマスク3万枚を送った。一衣帯水のアジア諸国が総力を結集し制圧したい。これからは人的支援も必要だろう。北里は1894年、ペストが大流行する香港に入りペスト菌を発見している。

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