聞き書き「一歩も退かんど」(75)まるで2対1の法廷 志布志事件冤罪被害者 川畑幸夫さん

西日本新聞 オピニオン面 鶴丸 哲雄

 2007年12月27日、踏み字事件第2回公判。被害者として証人尋問に立った私は、孤立無援の状態でした。検察側も被告側弁護人も、してほしい質問を私にしてくれないのです。ようやく助け舟を出してくれたのが、最初に私を「被告人」と言い間違えた林秀文裁判長でした。

 「H元警部補から受けた踏み字などの詳しい状況を説明してください」。これでようやく冒頭で宣誓した通り真実を証言することができます。私は一気呵成(かせい)に話し始めました。

 「H元警部補は私の両足首を握り、『おまえは血も涙もないやつだ』『親や孫を踏みつけるやつだ』と言いながら、バンバンバンと連続して10回くらい、無理やり紙を踏ませました」。さらには、その前の取り調べでも「焼酎を配ったことを認めるよう繰り返し怒鳴られ、机をたたかれました」と訴えました。

 裁判長は、踏み字の際に味わった屈辱感についても尋ねてくれました。私は「怒りを通り越して涙が出るような感じでした」と証言。そして、亡くなった父親をかたる紙を踏まされたことについて、「私は寝ている父親をまたいだことなど1回もありません。それほど尊敬する親なのに、紙とはいえそこまでするのかと…。今でも怒りがこみ上げます」。そう訴えて、証人尋問を終えました。

 すると検察側は私の証言を覆そうとでもするかのように、被告の供述調書を証拠提出しました。H元警部補が「踏み字の回数は1回だけ」「川畑さんの言い分には納得できない部分が多々ある」と語った内容です。なぜ被害者を無視し、加害者のうその証言を証拠にするのか。これが国民を守る検察の姿でしょうか。

 3時間を超える尋問を終えた私は、記者会見で思わずこう漏らしました。

 「2対1でやっている感じでした」

 検察と弁護側がH元警部補を擁護するタッグを組んで、私が1人でそれに立ち向かった-。それが証人尋問を終えた偽らざる感想です。代理人の野平康博弁護士が「検察は全く事件の本質に切り込んでいないばかりか、被告の詳細な言い分を明かすことで、情状面で被告を助けようとすらしている」と厳しく批判してくれました。私はこう言うほかありませんでした。

 「まるで私が被告のような扱いでした。これでは真相解明は遠いですね」

 いやはや、さすがの私も疲れました。 (鶴丸哲雄)

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