「車なし」厳しい地域多く 佐賀県警、運転寿命を延ばす支援も

西日本新聞 佐賀版 野村 有希

 2019年の佐賀県内の運転免許自主返納者数は、前年比768人増の3820人で過去最多を更新した。高齢ドライバーによる重大事故が相次ぎ、返納の機運が高まったのが理由とみられる。ただ、県内は公共交通機関網が不十分で、車なしでは生活できない地域が多いはず。実態を取材した。

 県警運転免許課によると19年の返納者のうち、95%以上が65歳以上の高齢者。返納月別では6月が418人(前年比205人増)と最も多かった。同年4月には東京・池袋で高齢運転者が母子をはね、6月には福岡市で高齢者の車両が暴走する事故が発生。これらが影響したとみられる。

 返納していない高齢者に話を聴いてみた。

 佐賀市諸富町の江口正則さん(82)は「車がないと何もできない」。実際、自宅から最寄りのバス停までは徒歩で30分ほど。「買い物とか、何をするにも車が必要。友人との会話では免許返納が話題に出るが…」と考え込んだ。

 神埼市の男性(78)も「バスを使うにも本数は少ないし料金も高い。不便で仕方ない」とこぼした。

 こうした実情を踏まえ、県警は免許の返納を促すだけでなく、高齢者の運転寿命を延ばす取り組みにも力を入れている。

 昨年4月には安全運転の支援や免許証の自主返納の相談などに応じる「シルバードライバーズサポート室」を設置。5月から70歳以上を対象に無料の技能教習を実施している。

 教習は佐賀市久保泉町の運転免許試験場で実施。約1・7キロのコースでS字やクランク、車庫入れなど課題をこなす。助手席には運転免許技能試験官が同乗し技能を採点。受講後は試験官からアドバイスを受けるという内容だ。

 夫婦で教習を受けた佐賀市の宮原都明さん(81)は「自分の運転を見つめ直す良い機会になった」。妻の民子さん(74)も「もう少し気をつけて運転しないとと感じた」と話す。

 これまで約100人が受講し、数カ月先まで予約が入るほど好評という。ただ、試験官の人数や車両の台数に限りがあり、実施は週1日で定員は4人。試験場が混雑する2、3、8月は実施しない。

 県警運転免許課の野口一幸交通聴聞官は「技能教習の回数を増やすのは難しく、教習以外にも運転寿命を延ばす新しい支援策を考えたい」と話した。 (野村有希)

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「高齢者技能教習」記者が体験

 高齢ドライバーの交通事故を防ごうと、県警が昨年5月から実施している技能教習は、「自分の運転を再確認できた」などと参加者から好評のようだ。どんな内容の教習なのだろう。体験してみた。

 教習では技能試験車でコースを走る。まるで免許取得の試験だ。助手席には試験官が同乗して運転者の技能を採点。100点の持ち点があり、違反があるごとに減点される方式だ。

 仕事で毎日、車を運転しているため、多少の自信はあった。ところが挑戦してみると脱輪したり、一発で車庫入れができずに何度も切り返したりと、予想以上に難しかった。

 走行後、試験官から告げられた点数は「マイナス185点」。持ち点が100点あったのに、マイナスになるとは…。想像を大幅に超えた点数に驚いた。一体、どこで減点されたのか。「脱輪はもちろん、左折の際に巻き込み確認を怠っていたし、交差点でも左右の安全確認をしていなかった」。淡々と説明された。

 県警シルバードライバーズサポート室の久浦厚室長は「教習は難しく、ほとんどの受講者がマイナスの点数です。点数をみて落ち込むのではなく、自分の運転の悪い癖を見直す機会にしてほしい」と話した。

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