「安全守るため」独自検問する北京の村 春節Uターンを警戒

西日本新聞 総合面 川原田 健雄

 【北京・川原田健雄】中国各地で新型肺炎が猛威を振るう中、北京や上海などの都市部では春節(旧正月)を故郷で過ごした人たちが戻ると感染が一層拡大するとの懸念が高まる。1日、北京市郊外の村を訪ねると独自の「検問」を設け、出入りを規制する動きが広がっていた。

 「部外者は立ち入り禁止だ」。北京市中心部から北へ車で約1時間。郊外のある村では住民約10人が出入り口に立ち、通行人や車両をチェックしていた。「村民の安全を守るためだ」。通行規制の理由を問うと住民の一人が答えた。春節休暇は当初予定の1月24~30日から今月2日まで延長されたが、早めに北京へ戻る地方出身者もいるため、1月29日から24時間体制で見張っているという。

 村内に入るには、身分証などを提示して村独自の「通行証」を受け取る必要がある。発行する施設に行くと、受付に並んでいた女性がこちらに向かって大声を上げた。「それ以上近づかないで! 感染しないようもっと離れて!」。記者を帰省先から戻った住民だと誤解したようだ。そう言う女性も河南省から戻ったばかり。地方出身者も互いに警戒の目を向けていることをうかがわせた。

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 別の村ではスーツケースを手にした女性(27)が中に入れず、通行門の外で困り果てていた。女性は村内の部屋を借りて夫と住んでいるという。1月22日に河南省洛陽市の実家に帰省。家主から「村の出入りが厳しくなっている」と連絡があり、慌てて北京に戻ったが、村側からウイルスの潜伏期間に当たる2週間、別の場所で過ごし、健康なら通行証を渡すと伝えられた。「まさかこんなことになるなんて…」と女性は戸惑いを隠さない。

 門の近くで写真を撮っていると突然「あんたたち、何しているの?」と高齢女性から詰め寄られた。村の検問スタッフだ。取材だと伝えると「私たちがこんなに苦労しているのに、批判的な報道をしたら絶対許さない」と訴えた。中国の農村部は医療水準が低く、肺炎が流行すれば集落全体が深刻な状況に陥りかねない。厳しい口調には切迫した村の危機感がにじんだ。

 村独自の「検問」は河南省などにも広がっており、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」には出入り口の道路を土や岩でふさいだ画像が投稿されている。こうした行為は社会不安をあおるとして、中国政府は1月末、適切な措置を取るよう警告した。しかし、当局も感染拡大の中心地である湖北省武漢市を封鎖しており、住民側は意に介さない。「村を守るのは当然だ。政府方針と違うことはしていない」。北京郊外の村民は言い切った。

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