ネットに広がる新型肺炎のデマ…専門家に聞く対応策

 新型コロナウイルスの感染拡大に不安が高まる中、インターネットの会員制交流サイト(SNS)ではデマや不正確な情報が広がっている。中国人、患者に対する差別、偏見が含まれる投稿も少なくない。専門家は情報の出どころを確かめ、冷静に対応するよう呼び掛けている。

 1月29日夜、ツイッターで「【悲報】福岡終了のお知らせ #拡散希望」と書かれ、クルーズ船の写真が添付された投稿が拡散した。当日、福岡に数千人規模の中国人が来たとも受け止められる内容だった。リツイート(転載)や「いいね」の合計数は1月31日夜までに6万件以上に達し、「ウイルス兵器は入国お断り」「上陸させるな」「今すぐ帰れよ」といった返信が書き込まれた。

 福岡市の高島宗一郎市長は30日早朝、自身のアカウントでこの投稿を挙げ、29日は博多港にクルーズ船は寄港しておらず、当面キャンセルの見込みと説明。「災害時同様、必要以上に不安を煽(あお)る情報に注意しましょう」と注意を促した。

 SNS上では1月、「発熱などの症状がある中国人が関西国際空港の検疫検査を振り切って逃走した」とのデマが広がり、空港側が打ち消す騒動が起きた。感染者が確認されていない青森県や沖縄県で感染例が出たとの投稿も。「コロナウイルスは中国の生物兵器」「紅茶が効果あり」といった荒唐無稽な内容もある。

 デマや不正確な情報だけではない。神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)によると、メールやSNSを使ってウイルスに関する情報を装い、偽サイトに誘導、IDやパスワードを盗むフィッシング詐欺も既に発生しているという。

 森井教授は「ネット上では衝撃的な内容を含む情報の方が広がりやすい。SNSやニュースサイトなどの情報は一概に信用せず、国や自治体のホームページに記載されているかなど、情報の出どころを自分で確かめる姿勢が大事だ」と話す。

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 これまでも重症急性呼吸器症候群(SARS)や新型インフルエンザなど、新型の感染症が流行するたびに、怪しい言説が流布してきた。関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は、2003年のSARS流行時の社会不安について5段階に分けた「五つのP」で説明する。これに照らすと、現状はデマのほか、中国・武漢から帰国した日本人への差別的な書き込みやうわさがSNS上で広がっており、三つ目の「Paranoia(妄想症)」の段階にあるという。

 ハンセン病患者の隔離政策にみられるように、感染症の歴史は差別の歴史でもある。背景には見えないウイルスへの恐怖心があり、欧米や韓国でも中国人差別と受け取られかねない動きが一部で報じられている。

 「うわさを制御するためには、情報の曖昧さを減らすことが必要」と勝田教授。「国や自治体は個人を特定しない範囲で包み隠さずこまめに情報を出すべきだ。感染のリスクや『感染した場合、どこの医療機関でどんな治療が受けられる』といった市民が安心できる材料を示すことも求められる」と語る。

 ネット上では、悪意を持ってデマを発信する人がいる一方、親切心から「友だちに教えてあげよう」と真偽を確かめずに不正確な情報を拡散してしまう人も少なくない。森井教授は言う。「リツイートすることや、誰かが言っていることをネットで書くことは、自分で書いたのと同じこと。不確かな情報を拡散した人にも責任があると意識してほしい」 (金沢皓介)

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