近代落語の祖・三遊亭円朝は、幕臣で明治新政府の要人にもなった山岡鉄舟…

西日本新聞 オピニオン面

 近代落語の祖・三遊亭円朝は、幕臣で明治新政府の要人にもなった山岡鉄舟と出会い、師事した。禅の師

▼円朝は3歳上の鉄舟から「おまえの話は生きておらん」と言われ、悩んだ末に「無舌」の悟りをひらいたとされる。禅問答といえば、落語ファンはこんにゃく問答を思い出すが、有舌の芸である噺(はなし)家が無舌とは…

▼舌で話すのではなく、こころで話す。無舌はそういう境地を感じさせる。「怪談牡丹灯籠」など怪談もので語られることが多い円朝が、人情噺の名作として演じ継がれる「文七元結(もっとい)」などを残したのも、こころの技ゆえか

▼一度落語を離れて商家に奉公するなどし、鉄舟の仲介で政財界でも知遇を得るに至った円朝は、19世紀最後の明治33年に61歳で没した。辞世の句の「眼を閉て聞き定めけり露の音」は無舌の世界に通じそう。今年は没後120年

▼生前の円朝をひいきにした人の中には井上馨や山県有朋、渋沢栄一らの名がある。「実に上品で、通り一遍のものではない語り」(渋沢)が政財界人の心もつかんだのだろう

▼「無舌居士」と刻まれた墓は、鉄舟が建立した東京・谷中の全生庵にある。この寺で座禅を組んだ現代政治家の名を複数聞く。安倍晋三首相は本紙記事で何度か見た。8年前は石破茂氏と一緒だった。翻って昭和以降の言論の府を振り返れば言葉の重みがどんどん失われつつある。そんな日本でいいのかと無舌が問う。

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